メロデー・トシカ その1
今日は日曜日なのでユイが来ていた。昨日京子は休んでいたので、2連休という事になる。
ユイが早めに帰りたいからという事なので、今日は昼間からパトロールをすることになった。
「京子さんの具合はどう?」
「順調に回復してますよ。ただの風邪なので明日は大丈夫と言ってました」
「それは良かった」
ユイとゆっくりとパトロールをする。
冬の空らしく澄み切っていて、高く見える。
風は冷たいが日が差せばそこそこ温かい。
今日はせっかく昼間なので龍王人池に来てみた。
御池田畑の地味な観光地の一つで、いつ行っても人が数えられたらいい方だ。
一応、龍王人が眠っているという伝説がある池だが、そもそも龍王人が何者なのか諸説あるのでよくわからない。
ただコイだけは気持ち悪いほどいて、エサを投げるとコイが組体操をやっているくらい重なり合って奪い合いをする。
それを見るのがなかなか面白い。
輪太郎がエサを買ってきて、ユイと二人で投げる。
エサを食べるコイの姿を見てきゃっきゃと楽しんだ。
「エサをあげるのって面白いですね」
「どこかで聞いたけど、施しっていうのはストレス解消になるらしいよ」
気が付くと輪太郎の財布から千円もなくなっていたが、それが気にならないくらい楽しかった。
ユイみたいな美女と一緒なのだから安いものだ。
再びパトロールに戻る。
日ごろは暗くなってからのパトロールばかりなので明るいと新鮮だ。
そして、ユイとすれ違う人が老若男女問わず振り返っていた。
美人過ぎてみんな驚くのである。
何回も会っている輪太郎でさえ、一週間ぶりにユイに会うと瞳孔が開き、ユイを見つめてしまう。
ユイが力を使えば、簡単に固められるだろう。
メディー族の狙い通りに、ユイの美貌にみんな目が吸い寄せられているのだ。
「あ、トシカ」と言ってユイが足を止める。
何事かなと思って輪太郎も先を見ると、ものすごいイケメンが不機嫌そうに歩いていた。
グレーのシャツにジーンズといった姿で、写真で修正を加えた後のモデルがそのまま出てきたような美形である。




