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蛇探し その4

「お疲れさまー。今回は大変だったね。蛇を捕まえる依頼だったのに相手がタコだったからびっくりしたよ~」


 京子が近づいてくると、のんびりとした口調で言った。


「京子さんの世界のタコってみんなあんな感じなの?」


「そんなにタコに詳しくないからわからないな。私はあんなタコを見たのは初めてだよ。普通のサイズだと私より少し大きいくらいかな」


「それでも大きいな。そう言えば京子さんの先祖がメドューサのモデルなんでしょう? 先祖の頃は髪の毛って本当に蛇だったの?」


 メドューサはギリシャ神話に出てくる怪物で見たものを石に変え、また髪の毛は毒蛇だったという。

京子の先祖が地球に来た時の噂がそのように伝わっているらしい。


「ああ、昔流行ったファッションだよね。蛇を束ねて、カツラにするの。今はムカデが主流かな」


 異世界のファッションセンスはわからんなあと輪太郎は思った。


「おおい、お前ら大丈夫か?」


 声に反応して見ると、ラスが大型のトラックから出てきた。


 シーナ・ラスは異世界の商人である。

小太りで顔に金魚鉢のようなものを被っていて、背中にタンクを背負っていた。

表現を変えると宇宙服を着ている。

依頼や報酬、アイテムの販売などはすべてラスが行っていた。


「ええ、大丈夫ですよ。一回死にましたけど」


「一回死んでも大丈夫と言えるのはあんさんくらいやろうな。さて、ボスにここにある死骸を回収しておけって言われてな。ほう、蛇の死骸が八匹に、タコのぶつ切りか」


 そう言いながらラスは死骸をトラックの近くまでひょいひょいと投げていた。

投げた死骸が落ちるたびにドスドスと重そうな音を出している。


「しかしラスさんは外に出るのにそんな恰好をしないといけないんですね」


 そう言って輪太郎はラスの宇宙服スタイルをまじまじと見た。

つなぎのような上下はピンク色である。


「そらあ、人間でいうところの水中にいるようなものやからなあ。ボスや京子はんが珍しいだけで、こっちの住人だとワシが普通やで」


 ラスはすべての死骸をトラックの近くに投げ終えると、今度はトラックの荷台の入り口を開けて、その中にせっせと入れ始めた。

輪太郎は手伝おうと思い、蛇の死骸を持ち上げようとしたが、見た目通りに重かったのでやめておいた。

新しい体のパワーアップが切れている。

京子も死骸を触りたくないのか、手伝わずラスの仕事ぶりをにこやかに見守っていた。


「さて、報酬の件やけど、蛇の数も多いし、タコもいたから増えると思うわ。まあ、またいくらか決まったら報告するから」


 そう言うと、ラスはトラックで行ってしまった。


「やれやれ、何とか無事に終わったね」


「そうだね~」


 京子がにこやかに答える。


仕事が終わったので京子は大きなサングラスを掛けていた。

京子は目が合うと生物を固める能力を持つが、制御が苦手らしく、日ごろはサングラスを掛けている。

おかげで、美人なのも相まって、いつも芸能人に間違えられているようだ。

ミーハーな人に色紙を渡される現場にいたこともある。


「サイン下さいって紙を渡されたのだけどどうしたらいいの?」

 とその時、京子は聞いてきた。


 女子高生が目を輝かせて京子を見ている。

一体、誰と間違えているのだろうかと輪太郎は思ったが「名前を書けば満足してくれると思うよ」と答えた。


「ふ~ん。そうなんだ」と京子は目白京子と書いて輪太郎に見せて字が合ってるか確認してから、女子高生に渡していた。

女子高生は名前を見ても嬉しそうにお礼を言っていたので、京子の事を名前は知らないけど芸能人だと思ったようだ。


「地球にはこういう文化があるんだね」


「うーん。あると言えばあるし、違うと言えば違うかな」


こんな田舎でそれなのだから、東京に行ったら京子は行動しづらいだろうなと勝手な心配を輪太郎はしていた。


「それにしてもボスって強いと思ってたけど、あそこまで圧倒的だなんて思ってなかったよ。ビックリした」


「私も驚いたよ。こっちの世界であそこまで動けるのは想像もできなかったな」


「京子さんの世界、マヴィスだっけ? あんな動き出来る人が何人もいるの?」


「どうかな? でも地球じゃ無理ね。あんな動きしたら息切れで死んじゃうと思う。でもボスって不思議だよね。メディー族が地球の環境に一番強いって言われているのに、メディー族でもないんだよね」


 メディー族とは京子の種族の事で、ある程度は地球にいても平気らしい。

それでも一週間に一日はマヴィスに帰って静養する必要があるそうだ。

ボスが帰っているかは知らないが、いつ会いに行ってもゲームをしている印象しかない。


「マヴィスに帰ったら京子さんもあんな動き出来るの?」


 そう言われて、京子は小首を傾げてしまう。


「ううん。どうかな? 本気を出した時の動きって自分では見れないしね。でもさっきのタコには勝てる自信はあるよ」


「へえ、そうなんだ」と言う輪太郎の声は少し震えてしまっていた。

薄々気が付いていたが、このメンバーの中で輪太郎は最弱である。

地球に来てパワーダウンしている京子にも余裕で負けるだろう。

商人のラスにも簡単に負けるだろう。

ボスには呼吸をするが如く、当然のように殺されるだろう。

お金をもらえたらもう少しスペアボディを買おうと輪太郎は思った。


 結局、今回のタコの討伐の報酬は3000万だった。

90%はボスが取るので、残りは300万だ。

それを京子と山分けするので輪太郎の今回の取り分は150万である。

スペアボディが100万、脱兎アメが3万、炎玉が3万なので今回の経費は106万となる。

44万の黒字だ。何とか黒字になって良かったなと輪太郎はホッとする。

しかし、今の輪太郎の所持金は257万で借金はまだ三億そのまま残っている。

いつになったら返せるかなと輪太郎は気が遠くなった。


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