メロデー・リョウコ その1
今日は学校に京子は来ておらず、ボスの屋敷に行くと姉のリョウコがいた。
京子は四姉妹の次女でリョウコが長女である。
「ちょっと京子の具合が悪いので代わりにお手伝いしに来ました。初めましてメロデー・リョウコです」
そう言ってリョウコは丁寧に頭を下げた。
リョウコは少し疲れた顔をしていたが、京子の姉だけあって美貌が凄まじく、陰のある美女といった感じで色気が半端なかった。
服装は上下がグレーのシャツとパンツで、どうもマヴィスはグレーが一般的のようだ。
そして背には抱っこ紐を使い赤ん坊を背負っている。赤子を持つ母のためか胸は大きい。
「この子はマーリです。まだ生まれて半年なの」
そう言ってリョウコは背中の赤ん坊を見せてくれた。
マーリは京子の姪だけあって奇跡のように可愛らしい顔をしている。
こんな子が自分の娘ならいいのにと高校生ながら輪太郎は思ってしまった。
マーリの天使の笑顔につられて輪太郎も笑顔になる。
「可愛いですね。絶対美人になりますね」
そしてマーリを見つめていたら、何か体の調子がおかしくなった。
何か体が空気に引っかかっているように、動きがぎこちなくなる。
「こら、マーリ。遊びで人を固めたら駄目よ」
リョウコに言われて、マーリはきゃっきゃっと笑っている。
輪太郎は赤ん坊に遊ばれていた。
「でも赤ちゃんは地球に来て大丈夫なんですか?」
「ええ、大丈夫よ。赤ちゃんの方がリゲンがなくても平気なの」
「そうなんですね。それじゃあ、パトロールに行きますか」
リョウコと歩きながら、輪太郎は豊作人参を食べた。
薄々、輪太郎はこの人参を食べると自分の勘が鋭くなっていることに気が付いていた。
それに良いことが起こる。
可愛らしいタヌキを見たり、コンビニのくじ引きで当たったり、真居子にストーカーされなかったりと色々だ。
リョウコがどこまで動けるかはわからないが、赤ちゃんがいる日にキルミに会ってしまうと困る。
今日は出来るだけ平和に過ごしたかった。
ボスの屋敷は住宅街のはずれにある。
下れば海に出るし、上れば山に着く。
住宅街を突き抜けていくと大きな国道に出る。
その国道を10分くらい車でかっ飛ばすと、おしゃれと無縁のショッピングモールがあり、さらに30分飛ばすと菊花駅がある。
要するに御池田畑に歩いて行ける駅などはないのである。
そんな御池田畑を輪太郎とリョウコは歩いている。
「輪太郎君はキョウコやユイに評判良いわよ」
「え? 本当ですか?」
「ええ、二人とも不思議と頼りになるって言ってたわ」
不思議という部分は多少引っかかるが、頼りにされていて輪太郎は嬉しかった。
二人に本気を出されたら、僕なんて秒でボッコボコにされるだろうに。
「輪太郎君は転生者なのかもね」
「転生者?」
「そう。生まれ変わりっていう方がわかりやすいかしら。生まれ変わりを何度もしている人を転生者っていうの」
そう言われて輪太郎は仏教を思い出した。
仏教は輪廻転生を伝えており、前世で悪いことをすれば次は良い人生になり、前世で悪いことをすれば悪い人生に生まれ変わるという話だったような気がする。
詳しくはしらないけど。
「そうなんですね。地球でも生まれ変わるっていう考え方がありますよ。自分が有名な人の生まれ変わりなら良いなって考えたこともあります」
あなたは織田信長の生まれ変わりですと言われたら、嘘でも何だか自分が凄い人に思える。
前世はお尻大好きのスケベの六助ですとか言われたら悲しい。
「地球の生まれ変わりの知識は少し間違っているわね。輪太郎君は世界は三つあるって聞いたかしら?」
「はい。地球とマヴィスとニビルですよね」
「そう。それでね、生まれ変わりには順番があるの。マヴィス人として生まれて死んだら、次はニビル人として生まれる。そして死ぬと今度は地球人となるの。地球人は死ぬとマヴィス人として生まれ変わるの。だから転生者と呼ばれる。三つの世界をグルグルと転生し続ける。そう言う人は稀な存在なんだけどね」
「じゃあ、僕の前世はニビル人ってことになるんですか?」
「そう。転生者ならそうなるわ。その前はマヴィス人になるの。三世界はある意味で繋がっているのよ」
突拍子のない話に輪太郎はビックリする。
自分の前世がニビル人で前々世がマヴィス人かもしれないなんて考えたこともなかった。
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