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木下再び その4

「終わった?」


 京子がぴょんと木の上から降りてきた。


「京子さん見てたんだ」


「いいよね、友達とじゃれ合うの。漫画のまねっこってしてたんでしょ?」


 京子にそう言われて、輪太郎は何か急に恥ずかしくなってくる。

ヒーロー映画のような熱い戦いをしていたつもりだったのにと思う。

木下なんて完全にヒーロー気取りだったし。


 ともかく輪太郎は気絶している木下を背負うとボスの屋敷に運びこんだ。


 ボスの部屋のソファーに木下を寝かせる。

木下は元気に寝息を立てていた。


「こいつは何だ?」とボスに聞かれた。


「どうもキルミに改造されてしまったようなんです」


「ん? ああ、確かに少しリゲンがあるな。じゃあ、起こしてくれ」


 ボスに言われて、輪太郎は木下のほほをぺちぺちと叩いた。

木下が目を覚まし、ゆっくりと目を開ける。


「京子、五時間くらい固めてくれ」


「はい」と京子はサングラスを取り、木下を見る。

木下は目を見開いたまま、微動だにしなくなった。

今まではサングラス越しで惚れていたのだから、京子の素顔が見れたので木下は幸せを感じているかもしれない。


「そいつを地下のテーブルまで運んでくれ」


「はい」と輪太郎は返事をしたものの、硬直した木下を持つのはバランスがとり辛く、また細身ではないのでそこそこ重い。

京子に手伝ってもらおうかと思ったが、京子なら一人で軽々と持てる気がする。

無用なプライドが邪魔をして頼めず、輪太郎は仕方なしにまたムサシスナック棒を食べた。

ドーピングしたので木下を片手で持ち上げ、地下のテーブルまで運んだ。


「ちょっと見てみるか」


 ボスはそう言うと人差し指の爪が伸び、鋭く尖っていく。

木下の服を輪太郎が脱がし、文字通りの腹の中の探りを入れるため、木下の腹が裂かれていった。

木下は固まっているため反応はない。


「ねえ、固まっている人って痛みとか感じるの?」


「人によるんだよね。地球人で強めに固めたからたぶん感じてないと思う。固まってからの記憶もないかも」


 それを聞いて、木下は拷問を受けていないのだなと輪太郎はホッとした。


 見事に木下の腹は裂かれ、血だらけの中に内臓が見える。

グロテスクなものに耐性のない輪太郎は顔をしかめた。

京子も少し嫌そうな顔をしている。

そんな中、ボスは涼しい顔で内臓をいじくっていた。


「ほう。リ臓がある。しかも肝臓に繋がれている」


 そう言うとボスは小さくて丸形の内臓を持ち上げて見せた。

太い血管が二つ肝臓に繋がっている。


「このリ臓は本来、地球人にはない。リゲンを貯蓄する臓器だ。しかも普通リ臓は肺に繋がっており、マヴィスの人間なら二つ持っている。しかしこいつは肝臓に一つ付いている。面白いな」


 ボスは興味深そうに、木下の内臓を見ている。

木下が死にはしないか輪太郎は内心ドキドキしていた。


 ボスが言うには、肝臓にリ臓が付いていることにより、リゲンの効力は弱くなるが地球でも生存が可能になっているらしい。


「普通のリ臓と違うかも知れないから調べてみるか。リゲンをまとうペンダントと言い、この人間と言い、長生きしているだけあってキルミの知識は興味深い。勉強になった。今回の報酬は500万イェン払おう」


 そう言うと、ボスは木下のリ臓を切り取って行ってしまった。

お金をもらえたのは嬉しいが、木下をどうすればいいのだろう? 

このままだとさすがに死んでしまう気がする。

輪太郎は紫プチトマトを食べさせようとするが、木下の口ががっちりしまっていて入らない。


「どうしようか。まだまだ動かないよね?」


 京子はちらりと木下の腹を見て答える。


「胃袋見えてるんだし、穴開けて入れちゃえば?」


 京子の大胆な発想に驚いたが、それもありかもなと思い、ナイフをラスに借りてくると、そっと胃袋に穴を開け、紫プチトマトを胃に押し込み、治りやすいように腹の傷口を手でくっ付けた。

少しすると本当に傷口が塞がったので、紫プチトマトってスゲーと輪太郎は思った。



そのあと木下は学校の校庭に捨てた。


 12月3日現在の輪太郎の持っているアイテム

ムサシスナック棒  2本

カチコチキャンデー 3個

脱兎アメ      8個

チョコと集中    3枚

うまいドリンク   4本

崖っぷち納豆    4個

紫プチトマト    2個

イチコロチーズ   4個

夜道のイチゴ    2個

豊作人参      4本

炎玉        3個

スペアボディ    11体

所持金      1153万イェン(ボスの報酬250万と利子の270万が引かれた額)

借金       2億7000万イェン


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