木下再び その3
「木下! 僕を怒らせたな!」
輪太郎は立ち上がり、そう叫んでからムサシスナック棒とチョコッと集中を口の中に詰め込んだ。
ほほがかなり膨らみ、もぐもぐと食べる。
一度に食べたので味の評価は難しいが、濃厚なチョコの甘みとスナックの塩味が調和して、美味しかった。
それにキャンディーをまた口に入れ、甘みも加わる。
というかマヴィスの物は今のところ外れなく美味しい。
「喧嘩しながら口いっぱいに菓子を食ってるんじゃねえ」
そう叫びながら向かってくる木下の動きが良く見えた。
チョコっと集中の集中力へのドーピングが効いている。
カウンターで輪太郎のパンチが入った。
「そんなものかよ」と言いながら木下は鼻血を出していた。
輪太郎はムサシスナック棒の効果がどれほどのものかまだ試していないので、かなり力を抜いて殴っていた。
本気で殴って木下が死んではいけない。
「まさか漆も女神様に会ったのかよ。お前強いすぎねえか。前も木にめり込むパンチしてたしよ」
木下は怪訝な表情をした。輪太郎は口からキャンディーを出す。
「そうだとしたらどうする?」
「へっへ。世界最強の二人の喧嘩ってことになってしまうな」
相変わらず強くなって木下は変なスイッチが入り調子に乗りまくっている。
まあ、確かに今の状態は地球人で最強だと思う。
ただ僕の場合は周りにそれより強い人がゴロゴロいるので全く調子に乗れないのだけど。
また輪太郎はキャンディーを口に入れた。
木下が蹴ってきたので受け止めてその足を持ち、後ろに投げる。
まるで投げた時の負荷を感じず、軽々と木下が吹っ飛んで行き、10メートルほど後ろの木に激突した。
やば、やり過ぎた。
また口からキャンディーを出す。
「木下! 大丈夫か?」
「へっへ。やるじゃねえか」
まだ木下は強さに酔っているようだ。
元気そうで安心する。
キャンディーを戻す。
また二人は激突し、お互いのパンチが腹や顔に当たっている。
輪太郎は徐々に力を込めて殴っていく。
次第に木下が押され、ふらふらになってきた。
「ちょっと待てよ。お前、おかしいだろ。昨日試したんだよ。100メートルも九秒台が出た。500円を指の力だけで曲げれた。原付のバイクを片手で持てるようになった。なのに、何で俺が負けそうになってるんだよ」
輪太郎は口からキャンディーを取り出し、空を指した。
「上には上がいるってことだな」
そう言って、輪太郎はとどめの一撃を木下の顔面に食らわせた。
こうして地球人最強のバトルが終了する。
そしてちょうどキャンディーも食べ終えた。




