コジロウとリンザ その1
今日はまたボスの屋敷に住んでいるコジロウに夕食を誘われたので、輪太郎は二人の部屋にお邪魔していた。
今回は京子も来ている。まだモラル族の呪いが恐ろしいのか、京子は緊張した面持ちである。
「ようこそいらっしゃいました。お口に合えばいいですけど」
そう言って、リンザが料理を運んでくれる。白いテーブルクロスに、赤いランチョンマットが引かれている。
テーブルの中央にはおひつが置かれており、開けると輝くような金色の米が入っていた。
海藻の汁物に焼き魚、肉の煮込みに漬物が出される。
材料は異世界のものなので何を使っているのかよくわからないが和食に似ていると輪太郎は思った。
前回も和食っぽい料理で髪の毛にドーピング作用があったが、今回はどうだろうか。
「この煮込み美味しい~。リンザさん料理上手ですね」
緊張していた京子が料理を食べてからにっこにこだった。
呪いのことを忘れていそうな勢いである。
「そうだろう。リンザは完璧なんだ。料理に掃除、何をやらせても文句なし、そして美人で心まで美しいんだ。まさに理想の女性だよ」
コジロウの言葉にリンザは苦笑いで黙って首を振っていた。
とても慎ましい動きで、品があり綺麗な動作である。リンザは京子とは違ったタイプの美しさだ。
「本当、そうですね」と輪太郎は同意する。
しかし、さっきから指の爪がミリミリと伸びている。
足の爪などは靴下を突き破りそうだ。
今回の料理は爪にドーピング作用が来ていた。
「私はまだまだです。いつも心を乱さないように必死です。相手を思いやり、相手を恨まず、すべての出会いに感謝できるよう努力していますが、とても難しいことです」
リンザの声は静かだがはっきりと聞こえる声だ。
その声にリンザの心の強さが現れているようだった。
「私のためにコジロウさんに苦労を掛けて申し訳ないと思っています。本当は私が身を引くのが良いのかもしれない。でも私もコジロウさんを愛しています。運命が私たちを出会わせたのなら、私は運命に感謝し、出来るだけ二人で過ごせるよう努力しようと思っています」
そう言うとリンザとコジロウは見詰め合っていた。
二人のように真剣に恋をしたことのない輪太郎は少し羨ましく思う。
「素敵」と京子が目を潤ませていた、京子の目を横から見ただけなのに、輪太郎は少し固まってしまう。
ボスの屋敷にはリゲンが漂っているため、京子の力も増しているようだ。
それから食事を味わい、コジロウとリンザとの会話を楽しんだ。




