ストーカー真居子 その4
「あら、あなたもいい男ね。この子、面白いから私にくれない?」
「それは出来ない。ところであなたはどこから来ているんですか? キルミさん」
「あら、いきなりレディの住所を聞くなんて、口説く方法を間違えているわよ」
「ともかく別に俺はあなたと争う気はないのですよ。でも部下を離してくれないとなると」
ドンと車が正面衝突したような衝撃が辺りに走った。
ボスの右足がアスファルトの地面にめり込んでいる。
「話は変わる」
ボスとキルミはじっと見つめあっていた。
「ああ、怖い怖い。この子の上司だけあってあなたの魂も少し変ね。地球で平気で動けているのはそのためかしら?」
「さあ、どうだろうな」
「後ろのメディー族の女も逸材だし、二対一だと分が悪そうね。今回は帰るわ」
キルミはそう言うとウサギを抱きかかえ、飛ぶように走り去っていった。
目の前のキルミがいなくなったので、輪太郎は尻餅を付いて倒れた。
「凄いな。あれは本物だぞ。本物のキルミだ」
ボスが珍しく興奮した口調で言った。
「伝説の不老不死の女ですか」と京子が聞く。
「そうだな。てっきり新手の狂人かと思ったが痣はないし、不思議な存在だ」
「でも今回もみんな無事で良かったです」
「そうだな」
そんなボスと京子の会話を聞きながら、いや僕は全然無事じゃないんだけどねと輪太郎は思った。
何せ両手はないし、下唇は噛み千切られて、口元は血だらけである。
「あの、助けてもらっていいですか?」
「あ、ごめんね。キルミがいなくなったからちょっとホッとしちゃって」
そう言うと京子は輪太郎の両腕を拾って持ってきてくれる。
はいと渡そうとするが、受け取る手が当然ない。
「試しに手を肩に付けてもらって、紫プチトマトを食べさせてもらっていい?」
「いいよ」
京子の手から口に紫プチトマトを入れてもらい、両腕を肩に張り付けてもらったまま、トマトを食べてみた。
しかし輪太郎の理想のようにはならず、傷口はふさがったが、唇が戻ったり手がくっ付くことはなかった。
「体を変えるか?」
珍しくまだいるボスにそう聞かれた。
輪太郎は少し考えるが、この体のままだと生活がままならない。
「お願いします」
そう言い終わったときに、一瞬自分の体が見えた。その体には首が付いていなかった。
ボスが刹那で首を削ぎ落していたのである。
ボスがぽいっと倒れている輪太郎の死体に生首を投げると、みんなのアイドル黒芋虫が、新しい輪太郎を出して死体を回収して帰った。
「さて、俺はそろそろ帰る。キルミに会えたから褒美に100万イェンをやろう」
そう言い残してボスは去っていった。
「聞こえた? 100万イェンくれるんだって」
「本当? それは良かった。しかし、俺いつ殺されたか全くわからなかったよ」
そう言う輪太郎はまだ黒芋虫の唾液まみれである。
それから避難させていた真居子を迎えに行き、家まで送った。
真居子は化けウサギを見たから、パトロールをしていることを半分は信じてくれたみたいである。
こうしてもらった100万イェンを京子と割り、50万イェンが報酬として輪太郎の手に入ったのである。
11月28日現在の輪太郎の持っているアイテム
ムサシスナック棒 4本
カチコチキャンデー 4個
脱兎アメ 8個
チョコと集中 4枚
うまいドリンク 4本
崖っぷち納豆 4個
紫プチトマト 3個(2個購入)
イチコロチーズ 4個
夜道のイチゴ 2個
豊作人参 4本
炎玉 3個
スペアボディ 11体
所持金 4168万イェン
借金 三億イェン




