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蛇探し その3

輪太郎は死んだ。


 すると地中から黒い芋虫が砂を押しのけて出てきた。

芋虫と言っても全長2メートルほどで、芋虫嫌いが見ると卒倒しそうな大きさだが、青い水晶玉のようなきれいな目が付いている。

その目が輪太郎の死体をちらりと見ると、口から新しい輪太郎をゲローッと吐き出した。

そして、死体の輪太郎を飲み込むと、プッと輪太郎の死体が付けていたポシェットとチュッパナイフを新しい輪太郎に吐き出し、地中に戻っていった。


「うわあ、ベタベタする。この唾液だけは慣れないな」


 そう言いながら輪太郎はポシェットを腰に付けた。

服装は変わらず学生服である。

タコと蛇たちもあまり事に戸惑っているように見える。

なんにせよ輪太郎は生き返っていた。


 輪太郎はスペアの体がある限り生き返ることが出来る。

スペアは買わないといけない。

今の輪太郎はあとスペアボディを四体持っていた。

なので今のところあと四回は生き返ることが出来る。


 蛇たちが新しい輪太郎に襲い掛かってきた。

噛みつき、体当たり、巻き付きなどの攻撃を輪太郎は何とかいなし、避けていた。

その動きは脱兎アメを舐めていた時より素早い。


 輪太郎は生き返ると一定時間だがすべての能力がパワーアップしている。

判断力、筋力、反射神経、攻撃力、防御力、スピードなどだ。

この状態だと相手がたとえ格闘技の地球チャンピョンでさえ勝てる。

 が、この学校の校舎のような大きさのタコにかないそうもなく、輪太郎は逃げに徹した。


 チュッパナイフでタコの頭を切りまくれれば勝機がないことはない。

このチュッパナイフの最大の利点は相手の硬度は全く気にしなくてもいいことである。

たとえ相手がダイヤモンド人間であろうとも、チュッパナイフはすり抜けて通過するだけで、場所や切る回数によって吸い取るエネルギーが変わるという武器だからである。

 

そのため目白京子の目が合うと相手を固められる能力とすこぶる相性が良い。

京子が固め、輪太郎が切る。

これだけでほとんどの敵は完封出来た。

この戦法で分が悪い敵は、射程が長い武器を持つ敵、巨大な敵、複数の敵であり、まさに今回のタコとの相性は最悪に近い。

 

逃げると言っても、浜辺から外へ行くと他の人に被害が出る可能性があるため、足場の悪い砂浜から動けず、輪太郎はちょこまかと動いている。

跳び箱のように蛇を避け、宙返りしてかわし、牙に頭突きをして体をずらす。


あと四回死ねるとは言え、輪太郎は必死だった。何せスペアボディは100万もする。脱兎アメが3万、炎玉も3万なので一度死ぬと出費が激しいのだ。


その上、今回の蛇の捕獲又は討伐の報酬が300万なのである。

いま目の前に蛇が八匹とタコ頭が一つあるので、300万から変動するかも知れないが、今回はボスを助っ人に呼んでいる。

ボスが報酬のほとんどを受け取るはずだ。

そのため、ただでさえ赤字っぽいのにこれ以上、死んでいられないのだ。


パワーアップしているとはいえ、息が切れ、避けるのもギリギリになってきた。

苦しい。

八匹の黒蛇がガンガン攻めてきており、一息入れる暇もないのだ。

救いはタコ頭が何もせずぼうっとしていることだった。

まあ、もしかしたらちゃんとあのタコが蛇たちに指令を出しているのかも知れないが、それはわからない。


ボス! 早く来てくれー! 


 そう輪太郎は心の中で叫んだ。


 その時、防波堤に座りながらこっちを見てケラケラと笑っているボスの姿が見えた。

しかもコンビニのチキンを食べている。


ボス、この野郎、早く手助けろ! 京子も横に座って見学してるし! 

と叫びたかったが口を開ける暇もなく、ついに蛇の体当たりをくらい、吹き飛ばされてしまった。

今回は幸いにぶつかる物がなく、砂場を転がっただけなので、ちょっとした打撲ですんだ。


「さて、交代といこうか」


 瞬間移動をしたかのようにいつの間にかボスが隣に来ていた。

正確に言うと蛇に吹っ飛ばされて、高速で後ろ回りで転がり、やっと体が止まって、口内でガリっと砂を噛んだ嫌な音がした時である。

 

ボスはいつもスーツの上着を着ずにサスペンダーと白いシャツに黒いパンツ姿である。

高給そうな黒革靴が砂浜にはどうにも不釣り合いだ。


 パンッと言う音と共にあの巨大なタコが消えていた。


え? と輪太郎は驚く。


よく見るとタコがいた場所にボスが立っている。

今度は空中でさっきの音よりも激しい破裂音が聞こえた。

空中を見上げると、タコ頭が花火のようにバラバラになりながら落ちてきている。

そして、輪太郎には全く見えなかったが、そのタコ頭をパンチで突き抜けたようで、空でボスがガッツポーズをしているように見えた。

バラバラのタコ頭と蛇が八匹落ちてくる。

蛇はまだ生きていて襲ってくるのではないかと不安になった。

しかし蛇たちは全く動かず、砂浜に落下していく。

近くに落ちた蛇に用心しながら近づくと、頭に拳がめり込んだ跡が残っていた。

いつの間にかボスが殴っていたようだ。


 まだ輪太郎は新しい体のためパワーアップしているのを感じている。

動体視力もアップしているのだが、ボスの動きが全く見えなかった。

ボスに逆らうのはやめようと改めて心に誓った。


「今回の取り分は90%でいいぞ。良心的だろ」


 確かにボスならば、すべて俺様がもらうと言い出してもおかしくないので良心的だと思った。


「はい。どうも助かりました」


「よし、じゃあ、帰る」


 ボスはそう言い残すと、消えるように行ってしまった


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