ストーカー真居子 その2
「目白さんが特別に綺麗なのはわかったけど、私が付いていったら駄目な理由はわからなかったよ!」
真居子の言い分を聞きながら、輪太郎はポシェットから脱兎アメを取り出して舐めた。
「わかった。じゃあ、付いてこれたら付いてきたらいいよ」
そう言ってから、輪太郎はダッシュして逃げた。
「それじゃあ、真居子さん、また明日ね」そう言って、京子も輪太郎の後を追っていく。
あっという間に二人とも走り去ってしまう。
追いかけたくても早すぎて、自転車があっても追いつけるかわからないほどだ。
「輪太郎、あんなに早く走れるんだ。格好いい」と真居子の輪太郎評価がまた上がっていた。
「置いてかれちゃった。寂しいな」
そう言うと真居子はとぼとぼと歩いていく。
学校では輪太郎と一緒だし、休みの日も部活で一緒だ。
近所とは言え、夜は輪太郎とほとんど一緒にいることはない。
でも他の女性と一緒だと思ったらやっぱり寂しい。しかも相手が美人過ぎるから心配。
真居子がそんな事を思って歩いていると目の前にウサギが見えた。
「あ、ウサギだ。可愛い」と声に出してから何か変だなと真居子は思った。
ウサギってこんなに大きかったっけ? 丸々と太った小学五年生のような大きさのウサギが赤い目でこちらを見ていた。
前歯が当たると手がちぎれそうなほど鋭く大きい。
だんだんと恐怖が心に沁みこんで「きゃああ」と真居子は悲鳴を上げた。
真居子が襲われていると勘違いして、輪太郎はダッシュで駆け寄り、ウサギに蹴りを入れていた。
心配で隠れて真居子の様子を見ていたのである。
そして蹴ってから気が付いた。
これはキルミのウサギである。
ついでにウサギが頑丈過ぎて、蹴った右足を捻挫してしまった。
「京子さん、気を付けて近くにキルミがいるかも」
そう叫びながら、輪太郎は足を治すためにポシェットから紫プチトマトを取り出そうとする。
その時に左足に衝撃が走る。何だ? と思った時に見えたのは豊満な胸の谷間だった。
「あなた、前に会ったわね。魂がない、タマなしよね」
背筋に悪寒が走る。
キルミが目と鼻の先にいる。
そして、左足はキルミの右足に踏まれて潰されていた。




