駆け落ち その2
「あれ? 人が倒れてますよ」
ユイにそう言われて見てみると、二人が砂浜に倒れていた。
波打ち際から離れているので、海から打ち上げられたわけではなさそうだ。
見ると男女の二人組で抱き合うように倒れている。
カップルが抱き合って寝ているように見えなくもない。
男は水色の着物を着ていて、女は上下ともに灰色のセーターとスカートといった姿だった。
「微妙にリゲンを感じますね。女性の服装もマヴィスでよくある感じですし、この二人マヴィスの住人ですね」
「そうなの? まあ確かに男女ともにちょっとここら辺ではあまり見ない服装だな。特に男性の方は」
「このままだとこの二人死んでしまいますよ。もう弱って動けないようですから」
「ああそうか。ユイちゃんたちが特殊なだけで普通のマヴィスの人は地球だと衰弱死するんだったね」
急ぐために輪太郎は脱兎アメを食べると、輪太郎は男性をユイは女性を背負い、ボスの屋敷に走って向かった。
「しかし、何で地球に来たんだろうね、この二人は?」
ほっほと駆けながら輪太郎は聞いた。
「たぶんですけど、年齢的に見ても駆け落ちか、無理心中じゃないかなと思います」
「え? そうなの?」
「そうですね。それぐらいじゃないと地球に来ることがないです」
地球で言うところの二人で川に飛び込むような感覚なのか。
無理心中って今はあまり聞かないなあと輪太郎は思った。
ボスの屋敷に着くと、まずラスの店に連れて行った。
ボスが看病をする姿が想像できないし、ラスの店なら何か良い薬があるかも知れない。
それにボスの屋敷の敷地内にはリゲン素が含まれているので、ひとまずは大丈夫だろう。
「どないしたん? カップルに嫉妬して張り倒してもうたん? あかんでそういう事したら」
ラスが長椅子に横たわる二人を見るなり真顔でそう言った。
「僕が手を出したわけじゃないです。勝手に海岸で倒れていたんです」
「まあ、冗談はさておき見たところマヴィスの住人やな。無理心中かな」
やっぱりそう言う発想になるんだなと輪太郎は思った。
「うまいドリンクでも飲ましてやり。話せるくらいにはなるやろ」
そう言われたので輪太郎が店のうまいドリンクを二本取る。
「まいど。6万イェンになります」
「え? お金取るの?」
「そりゃ商品やからな」
えー? 今の話の流れで僕が払う~?
輪太郎は心の中でだいぶ疑問に思ったが、しぶしぶ料金をつけてもらった。
ちなみに輪太郎の持ちイェンはラスが全て管理しているので、持ち歩いたことはない。
イェンでの買い物はラスの店でしか出来ないので理屈的におかしくない。
しかし、百イェンでももらえたら、それは100グラムの金なので日本円に換金すると48万円にもなる。
こんなに働いているんだから金が欲しいなあと輪太郎はたまに思っていた。




