表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/64

迷い人 その3

そこに異様に体が引き締まった青年がやってきた。

鉄のように固そうな筋肉で、こいつは地球人ではないと輪太郎も見ただけでわかる。


「母さん、こんなところにいたら駄目じゃないかにゃ」


「お前は誰にゃ。私は赤ちゃんを探しているにゃ」


「カルガだにゃ。母さん帰るにゃ」


 そう言ってカルガはその女性の手を引っ張る。

呆気に取られて、その二人のやり取りを輪太郎と京子は見ていた。


「そこの人助けてにゃ。乱暴されるにゃ」


 女性はそう言うと助けを求めてきた。

カルガという男は女性のことを母さんと言っているし、話し方も一緒で親子に見える。

しかし、女性は本気で抵抗していた。


「母さん、暴れないでにゃ。そこの人たち、少し離れた方が」


 そうカルガが言った時に衝撃が走って、輪太郎は吹っ飛ばされた。

京子の悲鳴が聞こえる。

体に稲妻が走ったようだった。

いや、実際に走ったのかも知れない。

このままだと死んでしまうと、何回も死んだ経験から輪太郎は思った。

震える手でポシェットから紫プチトマトを取り出し、口に入れる。

噛むとトマトの果汁が口に広がり、それと共に痛みがなくなり、手に出来た火傷が消えていく。

思っていたより、よく効くトマトだ。


 見ると女性の周りから電気が放出されていた。

カルガが苦痛の表情で女性を抑えている。

京子は少し離れたところで膝をついていた。


「大丈夫?」と輪太郎は京子に駆け寄る。


「うん。ちょっと痛かったけどね」


そう言って京子は立ち上がった。

サングラスを外しているので、輪太郎は京子の顔をまともに見れない。


「あの女性を止められない?」


「こっちを見てくれないのよね。目が合わないと固められないの」


 輪太郎は少し考えると、崖っぷち納豆を食べた。

笹の葉のようなものにくるまれている。

時間がないので混ぜず、かじって食べる。

効用が正しければこれで死ににくくなったはずである。

混ぜて食べたらもっと美味しいかも知れないが、これでもそこそこ旨い。


「母さん、地球でそんなに力を使ったら死んじゃうにゃ。やめてにゃ」


「離してにゃ。助けてにゃ」


 女性はそう叫んで、電気を辺りに放電しまくっている。

カルガも苦しそうだ。輪太郎は心を固めると、女性に向かい走っていく。

全身に高圧の電流が流れ、痛みで気絶しそうになる。

崖っぷち納豆のおかげで死にそうな感じではないが痛いには変わりない。

輪太郎は歯を食いしばり、女性に近づくとチュッパナイフで胸を切った。

黒い霧が切り口からチュッパナイフに吸われ、一秒後に放電は止まり、女性は気絶していた。


「何するにゃ!」とカルガに殴られ、輪太郎の顔は砕け飛び散り、即死した。


「こら!」と京子が叫ぶ。

カルガと京子の目が合い、カルガが固まる。


歩道の横の地面から黒芋虫が現れ、新しい輪太郎を吐き出すと、顔のない輪太郎の死体を飲み込み、アイテムだけまた吐き出すと、黒芋虫は帰って行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ