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メッシロ・ユイ その1

ボスの屋敷の庭にラスがトラックで運んできた八匹の黒蛇とバラバラのタコの死体を置いた。

蛇の皮を剥ぎ、その死肉に青い液体を掛ける。

青い液体は徐々に色が赤に変わり、そして赤黒くなった。


「どうだ。こいつらはマヴィスのタコと蛇か?」


 ボスが作業を見守りながら聞いた。


「ワシの持ってる図鑑には載ってませんでしたな。リゲンの含量も少し多い気がします。マヴィスの生物ではない可能性もありますな」


「そうか。リゲンの含量が多いのは朗報だな。よろしく頼む」


「はい、わかりました」


 返事を聞くと、ボスはすっと消えるように行ってしまった。


 しかし、ボスはこの地球で何を探す気やろうか? 

マヴィスの世界の生物でなければ、ニビルの生物という事になるはずやけどな。


 ラスは思案したがわからず、まあ給料も貰えるしええかと作業の続きを行った。



 ボスの部下になって一週間が経ち、今日は日曜日だった。

 仕事は夕方からなので、久しぶりに部活にでも行こうと輪太郎は思った。

真居子の家に行き、チャイムを押す。

ドアが開き、真居子が顔を半分だけだし、こっちを見ている。


「浮気者が来た」


「はいはい。あんまりしつこいと嫌われるぞ。一緒に部活行くか?」


 真居子はすぐに笑顔になると「行く」と言った。


 初日だけは顔合わせのためもあり京子と一緒だったが、それ以降は今まで通り真居子と一緒に登校している。


「だから前に一緒に帰ったとき、赤い変な人魂見ただろう。真居子が気絶しちゃった日だよ」


「うん。よく覚えてないんだけど怖かった覚えだけあるかな」


「目白さんはああいうのを何とかするエキスパートなんだよ」


「どういう事? 目白さんは陰陽師なの?」


「そう思ってもらっても構わない」


「そんな漫画みたいな設定を作ってまで浮気する?」


「否定するポイントは多数あるけど、目白さんと僕がこの町をパトロールして守っているの。それが仕事なの」


「またまたー」


 全然信用してくれないな、真居子は。

輪太郎は少し腹が立った。

ドーピングアイテムを食べさせたら信用するのだろが、もったいないのでやりたくない。

今度京子にサングラスを取って真居子を固めてもらおう。

そうすれば信用するだろう。


 剣道をして汗を流し、一度家に帰って、シャワーを浴びてからボスの屋敷に向かった。

すると今日は京子ではなく、メッシロ家三女のユイがいた。


「キョウコ姉さんは休養のため家にいます。代理としてきましたユイです。よろしくお願いします」


 ユイも息を飲む美女だった。

綺麗な顔立ちが京子より目立ち、少し大人びて見える。

京子は美人で可愛らしいが、ユイは美人で綺麗と言った感じだ。

目も少し京子より鋭い。


「よろしく。ユイちゃんはサングラスをしなくても大丈夫そうだね。僕の体が固まらないや」


「ああ、それはキョウコ姉さんが特別なんですよ。力の制御が苦手ともいえるし、力が強すぎるとも言えます。私もやろうと思えば固められるので安心してください」


 輪太郎とユイはまた町をのんびり歩き、気の向くまま歩いていると、輪太郎の家の前まで来ていた。

何気なしに真居子の家を見てみると、タイミングを計ったかのように、真居子が窓からこちらを見ていた。

ユイという美少女と歩いている輪太郎を見て、真居子は『これだから男は信用ならない』というようなジェスチャーをする。

そして「サンマタ!」と叫ぶと窓をぴしゃりと閉めていた。

セリフもなしに失望した雰囲気を出した真居子を見て、あいつは女優の才能があるかもと輪太郎は思った。


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