メッシロ・キョウコ その2
「ところでメッシロさんも」
「キョウコでいいよ。キョウコって呼んで」
「じゃあ、キョウコさんもだけど異世界の人と普通に会話は出来てるのが不思議なんだけど言葉は一緒なの?」
「ああ、地球語を勉強したんだ。ペラペラでしょう。この仕事の応募条件に地球語が話せる事ってあったんだ。私の母が地球の事が好きでね、その影響もあって独学してたの。それで運よく、こんな高給な仕事に就けたの」
「勉強したのか。じゃあ、異世界の人は違う言葉を話しているのね」
「うん。結構地球語と似ているんだけどね」
まあ、今話している言語は日本語だけどねと輪太郎は思ったが、あえて言わないことにした。
「そうだ。ちょっと透けて見える布とかないかな。それを通してみれば、たぶん地球人でも固まらないと思うんだよね」
父さんの薄い手拭いなら透けて見えるかなと輪太郎は考えた。
そしてキョウコがその手拭いを顔に巻いているのを想像して、首を横に振る。
こんな美女がそんな訳のわからない姿になってほしくない。
そこで輪太郎が格好つけて買ったが全然使ってないサングラスの存在を思い出した。
机の引き出しから取り出してみる。
「ちょっとこれ掛けてみてくれない? サングラスなんだけど透けて見えるよ」
キョウコは受け取ると素直に掛けていた。
目が隠れたので美しさは半減したが、それでも美女のオーラが凄まじい。
「いまリンちゃんを見ているけど、どう? 動ける」
「ああ、大丈夫。動けるよ」
「良かった。これいいね。自分の買うまで貸してくれない?」
「いいよ」と快く輪太郎は答えた。
「それで今日の夕方からパトロールをするんだよね」
「そうだね。それまでは学校があるもんね」
そう言われて、輪太郎は時計を見る。
そろそろ準備をしないと遅刻しそうである。
「おっと。もうこんな時間か。それじゃあ、キョウコさんは今からどうするの?」
「うん。一緒に学校に行くよ」
え? と思ったが、よく考えるとキョウコが来ているセーラー服は自分の通っている高校の物である。
「行くって、学校に通って授業を受けるってこと」
「そう。地球の学校生活に興味があってね、ボスにお願いして通えるようにしてもらったの」
戸籍とかいろいろな物がないと思うのだがどう都合をつけたのだろうか。
しかし、こんな美女が転校してきたら男女問わず色めき立つだろうな。
「わかった。じゃあ、着替えてすぐに出発するから外で待ってて」
「はーい」と言うとキョウコはスカートを抑えながら、気軽に二階から飛び降りていた。
輪太郎はパジャマから制服に着替えるとカバンを持ち、一階にどたどたと下りた。
そして、洗面台に行き、顔を洗い、電気シェーバーで軽く髭を剃り、トイレを済ませる。
「ちょっと今日は用事あるから今から学校行ってくるよ」と母さんに言うと「ご飯は食べないの?」と聞かれた。
お腹は結構空いている。
「じゃあ、パン二枚ちょうだい」
「何、食パンを食べながら学校行くの? 昔の少女漫画みたいね」
そう言いながらも、丁寧にジャムまで塗ってくれて、タッパーに入れて渡してくれた。
「ありがとう、行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」




