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第20話 神様的な存在になっちゃったみたいです



 セントラルシティ





 ――町中広告板――

『バグが知らない間に治ってるゲーム!?』

『過疎仮想世界に突如発生した新規イベントがとんでもない件について!』

『管理者権限を持ったプレイヤーが、新世界の女神として崇め奉られるようになった事に原因があるか!?』





 あれから、数日経って、ソングバード・オンラインの世界にはたくさんの人がやってくるようになりました。

 私のブログから来たよって人もいるし、人伝てに聞いてとか、他のネットで見たって人もいるみたい。


 私が拠点として活動していた町は、ちょっと前からは見違える様な賑わいになってて、私はとってもとっても嬉しいのです。


「ふふんふーん」


 私はそんな町の中をディール君と一緒にお散歩中。


「機嫌良さそうだな」

「うん、とっても。すっごく楽しいねディール君」

「全然隠さねぇな。まあ、悪い気はしねぇけど」


 管理者さんの仕事はまだまだあるんだけど、忙しくて大変。

 お忍びでこうやってお散歩したりしないと最近はちょっと息が詰まっちゃうから。


 有名人になっちゃったから、顔を隠さずに歩くと皆に話しかけられてくたくたになっちゃうんだ。


 私は大した事をした覚えはないんだけど、ミツバさん達が言うには、新しくなったこの世界の神様みたいなのになっちゃったんだって。


 だから、何かする時はきちんと慎重にって日ごろからよく言われるのです。


「あ、そう言えばミツバさんがね、今度お菓子を作ってくれるんだって、この間お仕事頑張ったからご褒美にって。ミツバさんのお菓子って、美味しいから好きなの」

「あいつの趣味が活きる時が来るとは、ちょっと前までは思わなかったな。ああ見えて、女の影なかったし」

「そうなんだ。ミツバさん。ディール君以外に友達いないのかな。やっぱりお役人さんのお仕事忙しいんだね」

「そういう意味じゃねぇけど、まあ良いや」


 何気ない会話だけど、油断したら笑い出しちゃそう。

 ディール君達が、私の事忘れないでいて覚えてくれてるって、当たり前の事だけど、とっても嬉しいなって。改めてそう思うのです。


 そんな風に雑談をしながら歩いて向かうのは、町にそびえるツリーの下。

 

 そこにあるのは全身をクリスマスの飾りでピカピカさせた、あのツリーです。


 季節外れでお正月も過ぎちゃったけど、せっかくだから完成させちゃったの。

 ずっと目標にしてたから、途中でやめちゃうのは嫌だったのです。


 ちょっと周囲との雰囲気が違うけど、でもそのおかげかな。


 実はこの木はね、「季節外れのツリー」として不思議観光名所になったんだよ。


 周りを見まわせば、ツリーを見に来たプレイヤーさん達がたくさん。

 皆とっても楽しそう。


 その中には前に知り合ったディーゼ君と、そのお母さんらしき人の姿もあります。


 そういう光景を見ると、頑張ってきて良かったなぁって本当に思うのです。


 ちょっと前まで大変で世界中がびっくりしちゃうような事ばっかりだったのは、よく皆から聞きます。

 あれが大変だっったよ。

 これが大変だったよって具合に。


 私は牢屋に閉じ込められてたから、皆がどんな風に大変だったのかなんて本当の所では分かってあげられないんだけど……。

 でも、それでも改めて良かったなって思うの。


「ディール君?」


 気づくと、ディール君が手を伸ばして私の手を握ってました。

 えっと、これってどういう事だろう。


「別に、単なる気分だ。それより日課の歌、ここで歌うんだろ。謎の歌姫として、さっさとやってこいよ」


 元気あげるよ、頑張れって感じでしてくれたつもりなのかな。


「うん、今日も歌ってくる。ディール君も聞いててね!」


 私はディール君に笑顔を向けて、ツリーの下に向かいます。


 管理者さんになっても、日課はやめられません。

 お歌を歌うのは私の趣味だから、定期的にここで披露しているの。 


 私がツリーの下まで行けば、知ってる人は拍手で出迎えてくれて、知らない人はきょとんって首を傾げます。


 今日は何を歌おうかな。

 あれにしようかな、これにしようかな。

 よーし、決めた。


 今日は、あの日の証を歌詞にした歌に決定なのです。


 そう思えば、ふっくら鳥さんのまるまるが飛んできて、私の肩に着地。

 一緒に歌ってくれるみたい。


 この歌は私の決意の証なの。

 この世界を、皆が楽しくいつまでも生きていける世界にしたいっていう気持ちの証。


 見上げれば空にある明り。

 あの日から、昼でも夜でもいつでも輝き続ける様になった、いつまでも落ちない明り。

 鳥がはばたくような形の流星……その煌めきを言葉にしたソングバードの歌。


「――」


 この世界の皆を導きつづける「歌う鳥」の旋律を、私は口ずさむの。



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