神の守り人
とある宇宙の彼方…暗闇の中、一つの小さな光が誕生した。この光の誕生は全世界にとっての希望か、あるいは絶望か…この時は誰も知る由は無かった。
NO.0始まりの章
暗い砂漠をオーロラの灯りが照らす中、本来なら何も起こるはずのない場所で"それ"は起こった。
その場所には突然ポッカリとした穴が空いたと思うと、その穴へ周りの砂が吸収されて行った。そして暫くするとその穴は当たり前のように塞がれ何も無かったかのようになった"はず"だった。この砂漠は普段から突如として穴が空くと塞がれる。というのは有名な話なのだが今回は違う。何も無かったはずの穴の中には『美しい人形 』、いや、'人形のように美しい青年'が埋もれていた。その容姿は誰が見てもただのイケメン。しかし、服は身につけていない。彼の身体はオーロラに照らされて輝いているが、それはどんどん寒くなっていく夜の砂漠の風に晒されて白くなっているからである。が、凍え死ぬ前に時間が経つにつれて身体が砂の中に埋もれている。こいつ、凍え死ぬ前に砂に埋もれて死ぬんじゃねぇか?と誰もが思うであろう瞬間、彼は目を覚ました。「ブハァ」────よく異世界転生された主人公が吐くセリフである。
彼は何事も無かったかのようにスクっと立ち上がり周りを見渡した。そして空のオーロラを見ると、ニヤリと笑い何かを思い出したの、彼は突然、自身の身体に一枚だけ身につけている物の中に手を入れ、ゴソゴソと何かを探し始めた。
「良かったぁ」彼が一枚の布の中から取り出したのは、彼の貧乏そうな容姿には見合わない一つの髪留めだった。
「これだけは無くしちゃ行けないんだよな」
そして、青年はその髪留めを頭に刺し、冷たい夜の砂漠を歩き始めた。そう、彼こそが後に伝説の守り人と呼ばれるようになる漢。その名も
『神の守り人』
月日は流れ、8年後…砂漠の都市デザイア
今日も暑い太陽が照りつける中、町で唯一の鍛冶屋からは鉄を打ち付ける音と屈強な漢たちの暑苦しい息遣いが響き渡る。
「お前ら!今日の昼飯の時間だぞ!」
彼等の親玉らしい男が手に持っていたペンチを手元の鉄骨に打ち付けると、鉄を打ち付ける音は一旦止み、静かになった。だが、次の瞬間その金属音は男達の声に置き換わる。そして、おにぎりを持った女性が現れた瞬間、彼等は大歓声に変わった。その筋肉隆々とした鍛冶屋達を纏めあげる女性こそ、この鍛冶屋の"女将"火憐だ。
「皆さん、今日は昆布と鮭のおにぎりですよ〜、午後も頑張ってね。」
そして、彼らは彼女が持つお弁当入れに殺到した。
暫くしておにぎりをみんなが取り終えるのを見届けた火憐は、火事場の2階の部屋をじっと見ていた。
「ファー君は今日は、火事場に降りてきたの?」
と、彼女の近くで仕事をしていた職人に彼女は声をかけた。それに気づいた男はヤレヤレと、頭をかき応えた。
「あいつ、今朝まだみんなが起きてない時間に材料だけ持って上に上がっていっちまったんですよ。みんなが仕事やろうって言っても降りてこないで何やってるんすかね。まぁ、多分なんか作ってるんでしょうけど。」
どんな場所────組織、団体の中には必ずと言っていいのかは分からないが変則者と呼ばれる者がいる。現にこの鍛冶屋には一人だけそういった変則者がいる。いつもはメガネをかけ本を読み、何かを思ったかのように突然下の作業場に降りてきていくつかの機材を持って上の階に上がっていく。そして、今日はどうやら今朝、機材を持って上の階に引きこもっているようだ。
「まぁ、そうなんですか。私が叱っておきましょうか??」
そう言うと、彼女は上の階に上がろうとする。しかし、そんな彼女を男達は制止した。
「いや、大丈夫です。あいつは俺らが下に降ろすので。」
そう言った男達はおにぎりを大事そうにしまうと、各々の火事道具を手に上の階に向かって叫びだした。
「おい、ファリド!何作ってるか知らんが働け!」
下の階からは、漢たちの怒声が響き渡る。しかし、中にいるファリドと呼ばれた青年は聞く耳も持たず自分の手を動かし続けていた。
「おい!ファリド!」
2回目の怒声…流石に聞くだろう…って、聞くわけないか…あいつは自分の始めた事が終わらないと聞かないもんな…
毎日のようにこの下りを繰り返している鍛冶屋職人達にとってはファリドを連れてくることがお昼前の準備運動になる。だが、どうして彼らは火事道具を手に持っているのか────それは何しろこの文学機械青年、力だけは強い。過去には郊外に出現した巨人を素手で倒している。だからいくら屈強な男達でも素手じゃ手が出せないのだ。しかし、そんなファリドにも弱点はある。しかも3つ。
一つは酒。彼は酒を飲むとすぐに寝る。というより、アルコールに弱い。飲むとすぐ真っ赤になってフラフラ。次の瞬間にぶっ倒れてジ・エンドだ。
二つ目は金。少しでも大稼ぎできるような話を聞くとすぐに吊られていってしまう。つい先日の夏祭りでも、一等のクジを当てたら10万ノル稼げるという話を聞きつけ、1発で当てたと思ったら、それは滅多に当たらないハズレくじの方で、残りのくじの代金を全て払うという物だった。まぁ、運は良すぎるのだが、見返りが激しいんだな。
そして3つ目…。まぁ大体想像もつくとは思うが、女だ。居酒屋で可愛い娘を見た途端、俗にいうナンパをし始め、飯を奢った挙句振られて帰ってくるのは日常茶飯事。こんな最低な男は直ぐにでも街から追い出されるのが普通だ。だが、彼は変則者。こんな事じゃ追い出されない。しかし、何故追い出されないか。そんな変則者だから、というだけで追い出されないわけは無いだろう。では何故追い出されないのか。それは、世界の制度によって定められている。この街の郊外には様々な種族が暮らしている。蜥蜴族、妖精族、など多種に渡る。中には巨人族などの野蛮な種族も住んでいる。しかし、彼らはいつまでもお互いが争って暮らして行く世界で本当にいいのか。と考えた人間がいるらしく、その人の呼びかけで世界で初の異種族間の会議が行われた。そうして数々の法が決められ、現在のような侵略戦争などが"少なくなって"いる世界が形成されたのだ。だが、言葉通り"無くなった"訳では無い。中には、弱い種族を狙った集団が村を襲い、いつの間にかその種族の領地になっているという、"裏の政略戦争"は日々行われている。そこで人間族達は、その争いから生き残る為にある制度を作った。それは「守り人制度」。これは、各集落の中に「守り人」と呼ばれる人間を決め、外部との抗争の際には「守り人」が責任を持って集落を守るという制度だ。そして、この砂漠の街、デザイアの現在の守り人筆頭であるのが、あろうことかファリドなのだ。大体の人はここで察しがつくとは思うのだが、彼が筆頭である事=それだけ街の民からの信頼は厚い。という事だ。こんな酒乱で女も酒も大好きな男がどうして筆頭になるまでの信頼を得る事が出来たのか。それは5年前のとある夜に起こった出来事にまで遡る。
最近、色々な場所で異世界転生ものが流行っているのを見て、ちょっと嫌気がさした挙句書いたSF小説です。
少しでも気になったら読んで頂けるとありがたいです。
文章が下手なので読みにくい所があるかとは思いますが、完結するまでは思う存分書き続けようとは思うので、どうぞよろしくお願いします。