悲劇の関係者
世界から見れば小さな島の小さな出来事。
分かっている。
だけどそれは私から言わせれば世界の崩落に等しかった。
ザアザアと雨が降る。
ザアザアと空が泣いている。
ドラマや漫画、何処かの作り話の予定調和のようにどんよりと蔓延った雨雲の下で傘を差して立ち尽くす。
お経を読む寺の住職の方の声が雨音に沈められて重たく地を這うように響いていた。
私はただ立ち尽くす。
享年十九の若過ぎる死を迎えながら、密葬を望む遺言書を残していた馬鹿な男の葬儀を前に。
足元で跳ねる雨水が靴を濡らして染み込んで、爪先からじわじわと体温を奪う。
彼の名は暁。丹色 暁。
私にとってはいつまでも頭が上がらない師のような、時には本気で喧嘩をし時には誰よりも前に立って守ってくれる兄のような、幼いながらに私の全てはこの人の為にあるのだと盲目に愛していた相手。
三つ上の幼馴染み。
彼の両親や妹の綺榎さん――綺榎さんは暁の二つ下、私より一つ年上だ――とも面識があり、日頃からよくしていただいていたこともあって訃報を知らされてすぐ。通夜の折より参列のお声掛けを下さったが……告別を伝えるには心が追い付かず、大変に申し訳ないが丁重にお断りを申し上げた。
いつかきっと、必ず整理を付けて墓は参りに向かうから。その時には彼に挨拶をさせて欲しいと。
読経が止む。
湿った空気を肺いっぱいに吸い込んで私は踵を返した。
別れを告げる為に、私はこの場所へと戻ってくる。
その時には大いに泣いてやろう。
子供のように喚き声をあげて、周りを困らせてしまうくらい盛大に。
雪を憎めと我は謡おう
凍える大地 冬の象徴たる雪を
故に我は六花を掲げん
我を憎めと我は謡おう
争う民 終わらぬ戦の象徴たる我を
六花の元に我はこの場に立ち宣言す
我は統べる者
我は終わらせる者
我は六花の長
進むべき道は既に示されている。