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私にとっても、あなたにとってもジュ・ナ・ン

 「花咲さん。少しよろしいかしら」



 「はい。いかがされましたか朧木様」



 「いえ、大したことではないのだけれど。あなたのその鞄からはみ出している物体は何かしら」



 「あぁ、これですか?これは家で飼っている犬の特大サイズのぬいぐるみです。名前は狐殺こころっていうんですけど、私こころが大好き過ぎて四六時中一緒にいないと気が狂ってしまいそうになるので、それをこのぬいぐるみで抑えているんです」



 「こころ?可愛い名前ね。それにしても気が狂うなんて大袈裟ね。現に今日までそんなもの無くても平気でしたわよね」



 「いいえ、私気が狂っていましたよ。ずっと!」



 「とにかく目障りだから今すぐ捨ててきてくれないかしら」



 「目障り?こころが?そんな!よく見て下さい。犬種はビーグルって言うんですけど知ってます?猟犬として有名ですから知ってますよね。ほらこの牙見て下さい。噛まれたら痛そうですね。可愛いでしょ?それにこれお腹を押すと鳴くんですよ」



 「わん!」



 「ひっ!」



 「あれ、朧木様どこに行くんですか?おーい!朧木様ー!急に走りだしてどうしたんだろう。トイレかな?ま、いいや。今のうちにお昼ごはんを食べてしまおう」



 自作の木のおはしを取り出し、お弁当の蓋を開ける。今日もおかずは鯖だ。昨日も明日もこれからずっとおかずは鯖だ。鯖大好き。サバアナイスディ!

 首には銀製の十字架アクセサリー、髪には菖蒲しょうぶの花飾り。鞄には痴漢撃退用のニンニクスプレーにその他もろもろの秘密兵器。うん。今の私は完璧だ!





 「全くなんですのあの花咲とか言う女は!絶対に許せませんわ!」



 「花咲さんに手を出すのは止めておいた方がいいと思うよ」



 「っつ!これは薫様。どういうことですの?」



 「彼女からは神聖な、いやもっと濃い。それこそ神に近い気配を感じるんだ。僕の天敵のね」



 「な!?それは一体」



 「さぁ?わからないけど僕らの正体に気づいているのは確かだね。ただ、攻撃の意志はないみたいだ。むしろ守りを固めて僕らと関わらないようにしている気がする。だから、朧木さんが余計なことをして彼女が亮に牙を向くようなことになったら・・・」



 「なんですの?」



 「僕が死ぬまで殺し続けるからね」



 アンデッドである彼が死ぬまで。実質永遠に続く殺害予告に筒音は静かに冷や汗を流した。しかしそんな恐怖をおくびにも出さずに口を開く。彼にはどうしても伝えなければならないことがある。



 「ええ、心に留めておきますわ。それよりいつまでここにいらっしゃるつもりでしょう。ここ、女子トイレですわよ!」



 「え!?あ、うん。ごめん」



 顔を赤くしながら出て行く友人を呆れた顔で見送る。亮のことになると周りが見えなくなるのは彼の悪い癖だ。

 しかし、神に近い気配を持つ転入生。花咲芽生。厄介ですわね。それにあのぬいぐるみ。わざとか顔が私の席に向くようにされていて全く心が休まらない。



 「とりあえず頭にリボンでもつけてもう少し可愛くしてもらおうかしら」



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