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序章
こんにちは。私、リシャール・フォックスという者です。
かの有名な吸血鬼団体Blood ROSEのお抱え仕立屋でありまして、布、糸、そして個性豊かなお客様に囲まれて暮らしております。
街外れの小さな家が私の大切な店になりますが、人間が入ることはなく、吸血鬼たちが出入りし注文をしていきます。
え? この丸メガネが素敵ですって。大変恐縮でございます。
これは十年前、木枯らしの吹く寒い日にBlood ROSEのマントを仕立てた時の褒美としてルーザ・バラック様から送っていただいた品なのです。
十年もの間、金の縁が一点の曇りなく輝いています。まるで高貴なあの方をそのままいただいたような気持ちに……ゴホン、失礼しました。
さて、私がこのフォックス家の家業をついで200年になるのですが、その記念として貴方に私の忙しい日々をお送りしたいと思います。
さあ、目まぐるしい日々に後れを取らないでくださいね。
――お仕事の依頼はラルムヴァーグ、エール街スミレ沼近くリシャール・フォックスまで。ルーザ・バラック様の近況をお話しいただける方には割引いたします。