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バイトでの日常




 放課後。

 結局活動日程は明日からということで話は終わった。とりあえず今から俺はバイトなので急いでいかなければならない。

 俺は学校をあとにすると、バイト先へと足を運んだ。

_______

_____

___

__



「すいません。遅くなりました」


 いつもシフト時間より20分程遅刻してしまった俺は、さっと着替えを済ませると、ホールに出た。

既に全員揃っていて、案の定俺が一番最後だった。


「謝らなくていいわ。大方、部活のことで話し合っていたんでしょう?」

「まあ、そうです」


 先輩は特に怒っているわけでもなくほっとした・・・が、先輩の背中からひょこっと姿を見せた子が俺を睨んできた。


「後輩の分際で遅刻するなんていい度胸ね。舐めているの?」


 そう言ったのはバイトでは先輩(年齢は同じ)の木島だ。有栖川先輩の背中から俺を睨んでいるこの子は、俺が最初にバイトに入った時からこんな感じだった。先輩によると、男が嫌いらしい。まあ世の中にはそういった子もいるだろうから俺は特に気にしていなかったのだが、どうやら俺が先輩によくしてもらっていたのが気に食わないらしくて、バイトではよく突っかかってくる。最初からずっとあんな態度だったので今ではもう慣れてしまった。


「後輩じゃなくて同い年だけどな・・」

「バイトでは私のほうが先輩よ。なに?貴方は先輩に対して何もいうことはないの?」

「まあまあ、沙羅。あんまり言いすぎちゃダメよ。神崎くんは、何もわざと遅刻してきたわけじゃないんだから」

「でもゆみ先輩・・」

「でも、じゃないの。あんまり聞き分けが悪いなら、沙羅のこと嫌いになっちゃうわよ?」

「ええ!?それは嫌です!言う事聞きますから、ゆみ先輩嫌いにならないで・・・!」


 冗談よ、と言って先輩は木島を撫でたあと、みんなに指示を出す。


「今日も頑張っていきましょう!」


 先輩の声に、スタッフ一同、おおー!という声が上がる。これが、俺のバイト先での始まりだった。

 皆の声に、寝癖がひどい店長が2階から降りてきた。


「あ、店長」

「ふわああぁぁ、ねみぃ・・・」


 店長は半分寝た状態で、手洗い場へと向かい少ししたあと戻ってくる。先輩がため息をついた。


「店長~・・・。今何時だと思ってるんですか?もう夕方ですよ?」

「ははっわりぃわりぃ。昨日は経験値2倍イベントやっててさぁ・・。明け方まで起きていたんだよ」

「またゲームですか・・。いい加減、その堕落した生活を見直したらどうなんですか?」

 

 すると店長は首を横に振った。


「おいおいゆみちゃん、それは酷ってもんだぜ。俺からゲームを取り除いたら何が残るって言うんだい」

「まあ、ゲームを取り除かなかったとしても何も残らないけどね」


 木島のいい様に店長は頭をかいた。


「相変わらずひどいな沙羅ちゃんは」

「気安く名前で呼ばないでください。鳥肌がたちますので。名前で読んでいいのはゆみ先輩だけです」


 そう言うと木島は先輩に抱きつく。先輩は少し困っていたが、お構いなしだった。

 

「店長。もうすぐ開店時間なんで着替えてきたらどうです」


 俺がそう言うと店長は気だるそうに頭をかいた。


「はぁ~働くってしんどいよな~。あー一生ゲームだけで過ごしていきてぇ・・」


 店長・・・。女性スタッフが全員ドン引きしてるし・・。

 よくこの人が店長でお店がもってるなとつくづく思う。それはまあ、店長じゃなくて先輩や他のスタッフが優秀なんだからだろうけど・・。店長はもうちょっと恵まれていることを自覚したほうがいいと思う。

 その後、お店は開店を迎え、少しずつ客が入ってくる。最初は忙しくないが、夕食時になると混雑してきた。


「16番様にカレーライスとチャーハン入りました」

「ええ。持って行くわ」


 そうして注文をこなしていく。皆の手際はかなりよくて、お陰で店の開店率もなかなかのものだった。だけれども、ひっきり無しに客が入ってくるので、俺達は常に忙しかった。

 やがて、人の客並みも少しずつ途絶え、再び静かな店内へと戻る。俺は店の外で少し休憩をしていた。

自販機でジュースを買うと、一気に飲み干す。炭酸の口の中ではじける感覚が気持ちよかった。

 不意に、お店のドアが開いた。ドアから出てきたのは、木島だった。木島は、俺を見るなり露骨に舌打ちをした。もう慣れているので特に気にしない。


「なんだ、あんたか・・。ゆみ先輩かと思ったのに」

「有栖川先輩ならまだホールにいるぞ」

「ふん。別に聞いていないわ」


 素っ気ない木島。本当に男が嫌いなんだな・・・。

 俺はジュースを飲み干すと、ゴミ箱へと捨てる。木島を見ると、彼女も自販機でジュースを買っていた。

 そのまま特に話すこともなくしばらく無言だったが、あることを思い出した俺は木島に聞いてみることにした。


「なあ」

「・・・」

「おーい」

「・・・・」


 話しかけても返事をしてくれない木島。仕方ない。


「あ、有栖川先輩」

「え!?」


 その言葉に木島が振り向く・・が、当然先輩はまだ店の中だ。


「聞こえてるじゃないか。無視すんなよ」

「あんたの気持ち悪い声なんか聞きたくないの。ちょっと黙っててくれる」


 木島は俺を睨むと、再びジュースに口をつける。


「木島はなんで男が嫌いなの?」


 俺のその問に、木島は黙っていたが・・・不意に俺を睨んだ。


「どうして私がそんなこと言わないといけないの?」

「いや、なんとなくさ・・・。あれだけ嫌っているというのには何か理由あるのかなって思っただけ」


 いつも有栖川先輩にべったりな木島。それは学校でも同じで先輩に男が近づこうものなら容赦なく排除しようとする。俺もバイトに入りたての頃はそうだった。いや、今でもか。俺をやめさせるために食べ物を運んでいる時に足を引っ掛けてこかせようとしたり、わざとぶつかってきたり、水をかけられたりと色んなことをされたが、先輩が庇ってくれたお陰で辞めさせられずに済んだ。結局木島の仕業だということがバレて先輩から大目玉くらっていたしね。あの時の彼女のうろたえぶりは尋常じゃなかったな。

 

「そんなの、男なんて汗臭いし汚いし下品だし、年を取ると太るし禿げるし口臭いし、いっつもふしだらな妄想ばっか考えてるどうしようもない生き物じゃない。そんなものをどうやって好きになるっていうのよ」

「・・・・」


 ははは・・・。

 俺はもはや苦笑するしかなかった。


「って、なんだ私があんたなんかにこんなこと言わなきゃなんないのよ。騙されるところだったわ」


 そう言うと木島は店内へと戻っていった。


「ふう・・・」


 木島と仲良くなるのにはまだまだ時間がかかりそうだった・・・・。







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