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慈しむべき日々(最終話)


「なんだお前は・・・!?」

「ったくこんな所にいただなんてな。全く見当違いのところを探していたぜ」

「へっ、何油断してんだよ!!」

「玄三危ない!!」


 玄三がぶっ飛ばした護衛がいつの間にか背後に忍び寄り玄三に襲いかかろうとしたところで、再びぶっ飛ば


される。


「玄さんに何してんだこの下衆が!!」

「おお、わりぃわりぃ。まさかもう後ろに忍び寄っていたとは」


 そこに現れたのは正斗だった。俺は突然の展開に驚きを隠せなかった。正斗は、俺に気づくと感極まって涙


を流し始めた。


「あ、兄貴ぃいぃいいいい!!ほんとに兄貴だ・・!!やっと見つけた・・!!」

「おい正斗何泣いてるんだ。今はそれどころじゃないだろ」


 玄三が正斗の頭を小突く。


「ちっ・・・こんなところで邪魔者が入るとは・・。おい、さっさと倒してこい」

「はっ」


 天王寺が命じると、正斗と玄三を男達が囲んだ。


「おい・・・せっかくの兄貴との感動のシーンを邪魔すんじゃねえよ」

「それには同意だ。頭には、色々と聞きたいことがあるからな」


 しかし、問答無用で護衛達は正斗達に向かっていく__!

 ・・・・が、結果は一目同然だった。二人は護衛を瞬殺すると、車の中に居る天王寺へと視線を向ける。


「よう、天王寺。またてめぇつまらねぇことしてやがんな。女さらって何しようが勝手だが、悪いけどその女は頭の大切な宝物なんだ。連れ帰らせてもらう・・・ぞ!!」

「ふん、ならば彼女たちを殺すまでです」

「させるか!!」


 玄三はパンチでフロントガラスをカチ割ると、ナイフで刺そうとした天王寺の腕を掴む。

 

「とりあえず表出ろやこのクズが!!」


 そのまま力任せに車の外へ天王寺をひきずりだす。当然、天王寺はあちこちにガラスが突き刺さり血が出ていた。


「ぐあああ・・!て、てめぇ・・・!!」


 再び口調が変化し、天王寺が激昂する。


「どいつもこいつも・・・舐めやがってぇ・・・・・・・!!!!!」


 俺は即座に車に向かって咲良と理子を救出する。縄を外すと、二人共泣きながら抱きついてきた。


「う、うう・・怖かった・・・!!!怖かったよぉ・・・っ」

「よしよし、もう大丈夫だからな」


 すがりついてくる二人に俺は優しく声をかけながら、俺は鋭い殺気を天王寺へ向ける。 

 

「お前は絶対に許さないからな・・・覚悟しろよ」

「ぐっ・・・」

 

 天王寺は自分が危機的状況にあることを悟ったのか徐々に焦りを見せ始める。そこへ、腕をポキポキ鳴らしながら正斗が近付いていく。


「咲良ちゃんと理子ちゃんを怖がらせた罪は重いぜ・・?」

「くそっ!出直しだ!!」


 天王寺は突然そんなことを叫んだかと思うと、まっすぐ後ろに逃げていく。


「あ、こら逃げるな!・・・玄さん!」

「悪い、俺そんなに足速くない。

 でもまあ、大丈夫だろ。だってあいつがいるんだし」


 段々その背中が遠ざかっていくが玄三は特に焦ったわけでもなく、手についた砂を払う。

 玄三の意図に気づいたのか、正斗も納得したようだった。って、


「おい、このままじゃ逃げられ_」


 そのまま天王寺が角で曲がろうとした時だった。突然足を引っ掛けられ、そのまま転倒する天王寺。


「・・・逃げられると思っているの?」

「あ___」


 そうだ・・。まだ一人いた・・・・玄三、正斗とくればそいつが出てくるのも当然だ。


「だ、誰だいきなり僕の足を引っ掛けたのは___!」

「・・・天誅」

「ぐぇっ!!!」


 首をチョップされて天王寺はそのまま気絶してしまった。そのまま、首根っこを掴みながらこっちにやってくる。

 正斗が手を叩く。


「いや、お見事皆本っち!最後においしいとこ持って行きやがって~」


 皆本理奈。かつて俺が他の不良たちから傷ついていたところを拾って助けてあげた少女。二年経った今でも理奈はそのままで何も変わらなくて、俺は懐かしく思った。

 理奈は汚らしいものを触ったあとのように、手を払う。


「はぁ・・・これで終わり・・んっ?」


 そうしてそこで初めて理奈が俺に気付く。


「あ・・・」


 そしてそのままゆっくりと俺に近づいてくる。俺はどういう顔をしていいかわからず、ただ呆然としていたが理奈は大粒の涙を流しながら俺に抱きついてきた。


「裕人・・・!!裕人、裕人裕人ぉ・・・!!」

「理奈・・・その、久しぶりだな」

「・・・今まで何処いってたの・・!?私、不安で不安で胸が張り裂けるかと思ったんだからぁ・・・!!」


 そのまま泣き続ける理奈を俺はそっと抱きしめてやる。


「うう・・感動の再会だなぁ・・おっと俺まで涙が・・」

「ふん・・・よかったな皆本」


 理奈が泣き止むまでずっと、俺はその背中をなで続けていた・・・。


___________

_______

____

__








「さてと、早いとここれ、なんとかしないと住民に見られたら大変なことになるぞ」


 周囲に散らばるガラスの破片、壊れた車、そして気絶している男たち。確かに、これは早いとこ片付けないと面倒なことになりそうだ。

 そうして俺たちは警察が来るまでの間、自分たちが出来ることだけやっておくことにする。その間、理奈はずっと俺にべったり抱きついていて離れてくれなかったが、玄三に、


「皆本は一番頭に会いたがっていたからな。まあ頭が勝手にいなくなったのが悪いんだし、我慢することだな」


 そう言われて俺は理奈に抱きつかれながらずっと片付けをして少し大変だったのだが、全然苦ではなかった。まあ、理子と咲良の視線が少し痛かったけれど。


「ふぅ・・。後は天王寺を縛り付けてと・・」


 俺は気絶している天王寺を縄で思い切りきつく締めると、警察が来るのを待つ。そこへ、今までずっと黙っていた理奈が口を開いた。


「裕人・・・・どうしていなくなっちゃったの?」

「それは・・・」


 俺は一瞬ためらったが、全てを話すことにした。理奈は俺が話す途中に相槌を入れながら話の腰をおることなかったので、話は直ぐに終わった。


「急にいなくなったりして本当に済まなかった」

「・・ううん。もういいの。裕人が無事ならそれで。でも、もう勝手にいなくなったりしないでね・・?」

「ああ」


 そうして俺は理奈の頭を撫でてやる。嬉しそうにしている理奈を見て、俺はもう勝手にいなくなったりしないことを誓うのだった。

 間もなく警察がやってきて男達が引き渡される。


「いや、君たち学生なのに解決しちゃうなんてすごいね。良かったら警察官にならない?」


 そう言われたが俺たちは当然断った。別に警察官になりたいわけじゃない。


「これでもう全員かな?」

「いえ、あと一人残ってます。ちょっと待っててください」


 そう言って俺は天王寺のもとへと向かう。ふう・・・。まさか、学生を警察に引き渡すことになるとはな。

 天王寺がどうなるかはわからないが、恐らくそれ相応の判決は下るだろう。まあ、別に天王寺のことなんかどうでもいいのだが。

 そうして天王寺を持ち上げようとした瞬間だった。


「・・・ふっ・・。最後の最後で油断したね神崎くん」

「___っ!?」


 パンっ・・・・!__。その場にいた誰もがその音に振り返る。


「おま・・なん・・・で」

「は、はは・・・!!念の為にと持ってきていた拳銃を持ってきていて正解だったよ」


 なん・・でそんな・・・持って・・!

 俺は腹部を押さえる。手を見るとべっとりと赤い血で濡れていた。俺はそこで一瞬意識が暗くなる。


「に、兄さん!!!!!!」

「お兄ちゃん!!!」

「裕人・・・!!!! 

「兄貴!!!」


 咲良達から悲鳴に似た声が上がる。


「てめえええぇ・・!!!なんてことしやがるんだぁあああああ!!!


 玄三が力任せに天王寺の顔面を殴る。しかし、天王寺は最後まで笑みをこぼすことはなくそのまま意識を暗転させていった。

 俺はそのまま立ち上がることできずにその場に倒れるようにして横たわる。警察が、何かにどこかに電話しているのが見える。


「至急、救急車を!頼む!人が今撃たれたんだ!!場所は___」


 ごめ・・ん皆。最後の最後で油断した・・。このまま、俺死ぬのかな・・・そんなのは嫌だ。まだ、玄三たちに謝ってもいないのにそんなの・・。

 皆が俺の周囲に集まってくる。


「おい、正斗!!出血を抑えるぞ!て伝え!!」

「はい!」


 そう言って正斗は自らの服を力任せに引きちぎって俺の腹部を抑えるが、血は一向に止まらない。


「・・血が止まらない・・」

「裕人!裕人ぉ!しっかりしてぇ!!死んじゃいやぁあ!!」

「兄さん、絶対に寝たらダメよ!!いい、わかった?絶対に寝たらダメなんだから!?」

「ごめ・・・も・・無理・・・」


 そこで俺は口から血を吐く。喋ることもままならなかった。俺は意識が遠のくのを感じながら、心の中で皆に謝り続けるのだった_______。



 


 

















   
















 それから兄さんが目覚めないまま、2年の月日が流れようとしていた____。

 兄さんが撃たれた時は本当に私は心臓が止まるかと思った。腹部から血を流して倒れた兄さんを見て頭が真っ白になった。その後病院に運ばれていった兄さんにすがり着く理子をなだめるのはとても苦労した。私も泣きたかった。だけれど、もし私まで泣いてしまったら兄さんはきっと悲しむだろう。だから私は懸命に耐えた。

 兄さんが集中治療室に運ばれたあと、私や理子以外にも、高崎先輩や有栖川先輩、木島先輩、東雲先輩、宮内先輩、玄三さん正斗さん理奈さんが駆けつけてくれた。全員兄さんの悲報に悲しんでいたけれど、一番危なかったのが木島先輩と理奈さんで、二人共涙が枯れるほど泣いていた。他の皆が大丈夫、と慰めても一向に泣き止まなく、それどころか理奈さんは天王寺を殺すと泣きながらずっとつぶやいていて錯乱寸前の状態だった。

 手術の後、全員が医者の言葉を待っていた。結果、一命は取り留めたというのだけれどこのまま目を覚まさない可能性があるということだった。それは私にとって死の宣告をされたようなものだった。そして私はそこで気を失う。その後にわかったことは、天王寺さんは警察により殺人未遂で逮捕。それに関連していた人達も全員判決待ちということだった。



 みんなは毎日のようにお見舞いに来てくれて、兄さんに色んなことを話した。寝ている兄さんはまるで今にも目覚めるんじゃないかと思えるぐらいのもので、私も期待していたのだけれど、その後も兄さんが目を覚ますことはなかった。

 兄さんが目を覚まさなくなって一ヶ月、二ヶ月と経っていくにつれて私達は徐々に元気を失っていった。

家でも会話はあまりなく、帰ったらぼーっとしている毎日。

 ある日、お見舞いに来てくれた有栖川先輩が、兄さんの髪を撫でながらこんなことを言った。


「神崎くんはね、今休んでいるの。今まで頑張ってきたんだもんね。だから今は休業中なの。だから、神崎くんの疲れがすっかり飛んだら、その時はひょこっと目覚めるんだと私は信じているの。だからその時はね、皆でこう言いましょう___」


 休息・・・。兄さんはもしかして既に目を覚ましてもいい状態なのに覚まさないということはそういうことなの?どちらにせよ先輩の言葉からは私を気遣う様子がみてとれて私は嬉しかった。

 しかし、それでも兄さんが目を覚ますことはなく、また一ヶ月、2ヶ月とときは進んでいく。私と理子は最上級生になり、先輩たちは皆卒業して大学へと進んでいった。それでも、先輩たちは毎日のようにお見舞いに来てくれて、理奈さんと木島先輩に至っては何日も泊まり込んだこともあった。

それだけ兄さんが大切にされているんだと思って私は思わず嬉しくなった。

 そして二度目の兄さんの誕生日がやってくる。この日は忙しい中全員が駆けつけてくれて兄さんを祝ってくれた。


「いやぁ、兄貴ももう社会人一歩手前かぁ・・。時が経つのは早いなぁ」

「なにジジくせえこと言ってるんだよ。まだ俺たちは学生だろうが」

「そんなことよりもさ、どうやったら女を堕とせるか考えようぜ」


 正斗さんと玄三さん高崎先輩ががたわいもない話で盛り上がる。その近くでは理奈さんと木島先輩が話していた。


「そうそう!神崎って本当にすごいのよ。私、なんで今まであんなにかっこいい人を嫌っていたんだろう・・・」

「・・・それは私も同じ。私も初めは裕人が好きじゃなかった・・。・・・だけど、裕人の優しさに私は段々とほだされていって・・気づいたら裕人が常にそばにいないと不安でたまらないぐらいにまで・・」

「今でも男は大嫌いだけど神崎だけは別だわ。神崎になら・・その・・・」


 どうやら兄さんの自慢話で盛り上がっているみたいだった。私も混じりたかったのだけれどやることがあるので後回しにする。

 その後方では先輩と理子が一緒に紅茶を飲みながら雑談していた。兄さんの寝顔を微笑ましそうに見ている。


「何、それは本当なのか」

「ええ。また動き始めたみたいです」

「ちっ・・・懲りない奴らめ。神崎に代わって私が始末してやろう」


 その近くでは東雲先輩と宮内先輩が何か内密な話をしている。・・・とは言うものの、大きい声で話しているためこっちにダダ漏れなのだけれど。

 そして、私は最後に兄さんの寝ているベッドへと近寄る。そしてそこへ腰を下ろした。


「兄さん・・・。今日はまたこんなに沢山の人が兄さんを祝うために来てくれたの。兄さんのためにプレゼントも用意してくれたんだって。だから早く起きて兄さんが自分で受け取らないと・・、私がもらっちゃうわよ」


 そうして兄さんの頬をつつくが、何も反応がない。わかっていたことだけれど辛かった。ダメだ、泣くな私。こんなところで泣いても意味がないのよ。私はなんとか堪えて、兄さんの手を握る。


「ね、兄さん。ケーキも買ってきたのよ。兄さん、デザート類は高いからって言っていつも買ってくれなかったじゃない。だから私楽しみにしてたんだから・・・。早く食べたいから・・・早く起きて・・・一緒に・・」


 そうして兄さんを見ても何も返事をしてくれない。 

 私が諦めかけたその時、ピクッ・・と兄さんの手が動いた。


「__!」


 一瞬見間違いかと思ったが、間もなく私の手が、兄さんの手によって包まれた。


「う、うう・・」


 兄さんが漏らした声に全員が一斉に反応する。私は溢れかけていた涙を抑えると兄さんに話しかける。


「兄さん!兄さん!」

「その声は・・・咲良?」


 


__ その瞬間、止まっていた私達の時間が動き出したような気がした__



  泣き出しそうになったのを私は頑張ってこらえる。

 ここで泣いたら兄さんに心配をかけてしまう。だから私は兄さんをとびきりの笑顔で迎え入れる決意をした。そう、それはまるで女神のように___




そして間もなく目を覚ました兄さんのために、私は女神のような微笑みをかけ____。



_____「お帰りなさい、兄さん・・・!!」______


 

 笑顔で兄さんを迎え入れた_________。 







 

兄のために女神は微笑む、これにて一応完結です!

詳しくは活動報告に書きますので宜しければ見てください!

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