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変化する日常



 昼休み。俺は高崎と一緒に弁当を食べようとすると、目の前に東雲がやってきた。


「おい、ちょっといいか」

「ん?俺?」


 少し睨むような視線でこちらを見る東雲。俺は弁当を開ける手を止めた。すると高崎が興味深い様子でこち


らを見ていた。いや、高崎だけではなくクラスの皆がこちらを見ていた。


「ああ・・やっぱり間違いない・・。ちょっと来てもらおうか」

「は?え、ちょ待っ___」


 そのまま俺は彼女に腕を握られてそのまま教室外へと連れられる。慌てて解こうとするが、はずれなかった。


「(外れない・・・?なんて力なんだ)」


 半ば東雲に引きずられる形で俺は屋上へと連れてこられた。屋上でお弁当を食べていた学生たちが少しこちらを見ているのがわかる。

 

「そろそろ外してくれないか」

「なら自分で力づくで離してるんだな」


 は?この子は一体何を言って___っ。

 その瞬間、腕を握られていない方の彼女の手から拳が飛んでくる。俺は反射的にそれを受け止めると、そのまま力づくで彼女の捕縛から離れた。

 そのまま少し距離を取り、俺は構えを取った。

 ・・・一体なんだって言うんだこの子は・・。俺に恨みでもあるのか?いきなり殴ろうとしてくるなんて。

 東雲は俺を握っていた自分の手を見つめたあと、再び俺を見た。


「ふむ・・。その構えはやはり神崎 裕人だな?」

「ああ・・そうだが。いきなり殴ってくるなんて随分手厚い歓迎じゃないか。俺に恨みでもあるのか?」


 俺がそう言うと東雲は口元にふっと笑みを浮かべた。


「ああ、そうだな。ようやく見つけた・・・という感じだな」


 どうやら向こうは俺のことを知っているみたいだ・・。しかし少なくとも俺は彼女のような可愛い子を見た覚えはない。過去に赤髪の仮面の女と戦ったことはあるが・・・。

 

「お前、この2年間どこに逃げたと思ったら・・こんなとこに逃げていたとは。そりゃ見つからないわけだ・・・」

「何が言いたいんだ?」


 2年間・・・というと丁度俺が不良をやめてこっちに引っ越してからだから・・まさか、その時の関係者か?


「まだ思い出せていないみたいだな。なら、これならどうだ?」


 そういうと東雲は懐から取り出した仮面を顔につける。


「・・・・成程。どうりで後ろ姿に見覚えがあると思ったわけだ・・・」


 俺が不良だったころのライバルにして最凶の敵、通り名は赤い死神(ペルセフォネ)・・。まさか東雲だったとは。

 しかし、厄介なことになった。彼女がここに来たということは・・・。


「お前、どうして姿を消したんだ」


 東雲の問いに、俺は堂々と答える。


「色々とあってね。もう俺は足を洗ったよ。お前は相変わらず続けているようだが」

「当たり前だ。喧嘩は素晴らしいぞ。人を殴る快感というものは私にとっては至上のご褒美だ」


 相変わらず偏った思考を持っている東雲に少し引きながらも、俺は構えを解かなかった。


「今まで私の相手になる輩がいなくて詰まらなかった・・。赤い死神(ペルセフォネ)という通り名など私にとっては


どうでもいいことだが・・・、そんな時お前が現れて私を打ち負かした・・。

 私はその時悔しいという気持ちよりも喜びの気持ちに満ち溢れていた!私を超えるやつがいたこの世界に何度も感謝をした!やっと楽しめる相手ができたと思ったのに・・なのにお前は不意に忽然と姿を消した!」


 東雲の拳が固く握られる。俺は警戒を強めるが、どうやら殴りにくるようではなかった。


「そっちの都合なんか知るか。俺は今は二人の妹を養っていかなければならないんだ。そんなことにうつつを抜かしている場合じゃない」

「どうやらその2年間の間に大きな出来事があったようだな。あの触れたら殺されそうなお前の姿は今はすっ


かりなりを潜めて落ち着いてしまっている・・・。残念だ」


 東雲は拳をおろした。俺も構えをとく。


「今のお前と戦っても面白くない・・しかし、だからと言ってやっとできた可能性を潰すわけにもいかない・・」


 東雲は少し考える素振りを見せたあと、何かを閃いたようだった。


「ならお前を再び以前の状態に戻すまで。私はお前を倒してやっと満足できるんだ。

 ずっと探し続けていたものがこうもあっさりと見つかるとは・・人生とは本当に何が起きるかわからないな」

「結局お前が何がしたいんだ?」


 東雲の意図が読めない俺は問を投げかける。


「何がしたい・・・か。そうだな。 

 ・・・・

 ・・・・・・そうだ。部活を作ろう」


 ・・・は?部活?


「ふーんまぁ、それなら勝手にしてくれ。だけど、もう俺にあまり干渉しないでくれよ。俺はもう不良をやめたんだから」

「何を言ってるんだ。お前が入らないと何の意味もないだろう。私はお前に再び戻ってもらいたいのだから」

 

 何を言ってるんだこの子は・・。


「部活名は・・・そうだな893部でいいだろう」

「893部・・?」

「ああ。ヤクザ部だ。ただ、直接そのように書くと通らないかもしれないので少々濁してみたのだ」

「ふざけているのか・・?とにかく、俺はそんな部活は入らないからな」

 

 バイトもあるし、いちいちこの子の言う事を聞いていてもキリがない・・。

 俺は教室に戻って弁当に行こうとするのだが、次の東雲の言葉で止まらざるを得なくなった。


「そうか、じゃあ仕方ないな。お前が以前住んでいた街ではとんでもない不良だということを学園中に広めることにしよう」

「は、はあ・・!?」


 おいおい・・・それは困る。そもそもこっちに引っ越したのも誰も俺が元不良だということを知らないからだというのに・・。

 ばらされるのは困る。いや、俺は別にいいのだが、もしそれで理子と咲良に何か影響があるというのならば俺は全力で阻止しなければならない。


「そんなこと、言いふらしたところで誰も信じないぞ」


 そう言うと、彼女はにやりと微笑んだ。ああ・・これは嫌な予感しかない。


「私は、お前がほかの不良どもを瞬殺している様子の写真と動画をいくつも持っているぞ。流石にそれが流出したら、信じざるを得ないだろうな~」


 なんでそんなもの持ってるんだよ・・・。というか写真や動画を撮られてることなんて全然気付かなかったぞ。あの当時周囲にはかなり警戒を配っていたはずなのに。なんて子だ。


「くっ・・・流石にそれをばらされるのはまずい。

 不本意だけれど、東雲の部活に入るよ・・・」


 すると、東雲の顔がぱっと輝いた。


「本当か!いやぁ~よかったよかった。ふふ、これでこれからのつまらない生活から脱却できそうだ」


 そう言ってはしゃぐ彼女に一瞬見とれかけたが、俺は敵だということを思い出し、振り切る。


「よし、では早速申請してくる。絶対逃げるんじゃないぞ!」


 そう言うと東雲は目にも止まらぬスピードで屋上から走り去ってしまった。

 しかし面倒なことになったな。これからは部活に加えてバイトか。また更に家に帰る時間が遅くなりそうだな・・。気が進まないが、理子と咲良に説明しておいたほうがいいだろう。脅されたことは抜きにして。

 俺は再び教室へと戻った__。


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