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タイフーン抗争

ここから、戦闘描写が多くなってきます。


 

 家に着くと、俺は冷蔵庫にお茶をしまい、そのまま部屋へと戻る。


「っ・・、触ると痛いな」


 俺は服をまくり上げると、赤くなったお腹をさする。天王寺のやつ結構本気で殴っていたっぽかったからな・・。実際一瞬吐きかけたし。まさかあんなところで不意打ちが来るとは思わなかった。

 しかし天王寺か・・。確かに、あの当時は俺は特に目的もなく不良やってたからなぁ・・いちいち潰していた奴達のことなんか考えたこともなかったが、あんなに恨まれているとは。まさかこんなところでつけが回ってくるとは。だが、きっちりけりはつけないと。

 そして俺は怪我をしている腕を動かしてみる。まだ動かすと鈍い痛みがあるので最悪片手でなんとかしないといけないだろう。天王寺が明日何を仕掛けてくるのかはわからないが俺の心をえぐりに来ると言っていた。

それの意味することは肉体的な攻撃ではなく、精神的に参らせてから・・というものだろう。ということは、俺の弱みでも握っているのか・・・?

 そこで俺は自分の弱みについて考えてみる。


「俺の弱み・・・か」


 確かに、理子や咲良に何かしてくるならば、俺は気が気でないだろうが天王寺は恐らくそんな方法には訴えない・・・だろう。あいつはあくまで俺に恨みがあるはず。

 そうして俺は考え込んでいるところに、部屋がノックされた。


「兄さん、入っていい?」

「ああ」


 そして咲良が部屋内へと入ってくる。風呂上がりなので髪はほんのりと濡れていた。


「珍しいな、咲良が俺の部屋に来るなんて。何か用か?」

「用がなきゃ入っちゃダメなの?」

「いや、そういうわけじゃ・・」


 そうして咲良は俺のベッドに腰掛ける。催促されて俺はその隣に座った。


「ねえ、兄さんはあの事件のこと覚えてる?」

「あの事件?」


 かなり抽象的なことを言われて俺は頭の中を模索させるが、どの事件なのかわからない。


「そう。兄さんが不良だった頃、ヤンキーや不良たちとの間で1度かなり大規模な抗争があったじゃない。・・・確かその抗争があった日が台風だったことからタイフーン抗争って名前がつけられたやつよ」

「ああ・・・あれか」


 確か、当時かなり勢力をもっていた連中達が手を組んで俺に喧嘩を売ってきた時のやつだな。流石に4桁に


上りそうな相手を一人で相手するのはかなり厳しい・・・というより不可能に近かったのだが、台風があったおかげでうまく統率力が取れずに俺がその隙をついてなんとか壊滅させた事件だ。まあ事件というほどのことでもないが、河川敷に気絶している人たちの集団があればそりゃ住民たちは大慌てなわけで、警察沙汰になったものだ。一応正当防衛ですって主張したけど理子や咲良や玄三達が来てくれなかったら正直危なかったな・・。


「思い出したよ。だけど、どうして突然?」


 すると、咲良が少し神妙な顔つきになる。


「実は、最近この辺の治安が悪いっていう話は前にしたでしょ?」

「ああ」


 実際この怪我も木島を庇って受けたものだしな。それに、夜になると暴走族やら怒鳴り声などが聞こえてくることも少なからずあり、空気が悪いなとは思っていた。


「それで、他県の悪い人たちが皆こっちに集まってるみたいなの。何をするのかはわからないけど、少なくとも兄さんが過去に潰した相手は全員集まってるみたい」

「ちょ、ちょっと待て。話が見えないんだが」

「私、少し嫌な予感がするわ。こっちに集まってきていることもそうだけど兄さんが過去に潰した相手が全員こっちにやってきているっていうのもおかしいわ」


 咲良に突然そう言われ、少し混乱する。待て待て、一体どういうことだ?なに、最近ここら一帯の治安が悪いのは他県の不良どもがこっちにやってきているから。それはわかった。だけどその中に俺が潰した相手が全員いるということは・・・。

 俺は考えたくないが、そう信じざるを得なかった。思わず深いため息をついた。


「どこから情報を嗅ぎつけたのかは知らないが・・・まさか、俺を狙いに来た?」


 咲良は頷く。

 まじかぁ・・・。俺があの当時倒した相手の数なんてもはや覚えてないが、タイフーン抗争の人数もカウントするのなら4桁はいっているだろう。もしそいつらが全員俺を倒すためだけに来ているのだとしたら・・・。

 俺は怪我をしている腕を見る。この腕はまだ使い物にはならない。酷使したところで、諸刃の剣だろう。つまり、俺は片手で対応しなければならない。万全の状態でもぎりぎりだったのに、片手の状態で・・となるともはや無謀というべきか。

 ん、ちょっと待て。俺は大事なことをきき忘れるところだったんじゃないか?


「なあ咲良。なんでお前がそんな話、知っているんだ?」

「それは・・・」


 咲良が押し黙る。それも珍しいことだった。

 しばらく黙っていたが、やがて咲良は決心するとこういった。


「実は、少し前まで私の帰りが遅かったことがあったでしょ・・?あの時私ね、ある人に会いに行っていたの。どうしても伝えたいことがあるから来てって」

「ある人・・?」

「そう。その人はね、兄さんもよく知っている人物よ。だけど兄さんが不良を辞めてからは一度も会ったことがない人」


 な、・・・まさか。いや、でもあいつなら本当にやりかねない。


「・・・玄三か」

「そうよ」


 俺はそれについて喜ぶべきなのか否か全く選べないでいた。とりあえず咲良が夜中に変なことをしていないということはほっとしたが、よりにも寄って玄三が既に俺の居場所を見破っていたとは。


「でも、玄三さんは私達が住んでいる居場所まではわかってないわ。検討はつけたみたいだけど。でも2年経っても玄三さんは何も変わっていなかったわ

「そうか・・だけどなんでこの辺だってバレたんだ?」

「今日会った天王寺さん・・?だっけ。あの人が言いふらしまくっていたみたい。それで、兄さんに倒されたもののフリをして天王寺さんから色々と聞いていたの。そしたらそれが兄さんを倒すためだってわかって、それでこの辺にいるということがわかったみたいなの」

「わかった。それで、どうやって玄三から連絡を受けたんだ」

「連絡を受けたわけじゃないわ。玄三さんがこっちに来た時に私とばったり会ったの。まさか私のことを覚えているなんて思わなかったわ」


 なるほどな・・。だが、今更そんな忠告をされたところで何をどうしたらいいと言うんだ。まだ俺を狙っているかどうかはわからないが、十中八九俺関連のことだろうな。


「全く・・・不良からは足を洗ったというのに。これからはそういうのとは無縁で生きていこうと思ったのに・・・なんでこんなつけが回ってくるんだよ」


 俺の深い溜息が、部屋内に響き渡ったのだった・・。








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