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3日ぶりの学校


 次の日。俺は包帯をした状態のまま学校へと行く。道中、理子と咲良がずっと俺を守るようにして囲んでいて周囲の人たちから見られていて少し恥ずかしかった。学校に着くと、咲良も理子も教室まで送り届けると言ってくれたが、俺はそれを断って二人を教室へと追いやる。



「ったく、二人共心配しすぎだ・・。俺は赤子じゃないんだから」


 そうして俺も教室内へと入ると、包帯でぐるぐる巻きの手を見て皆がこっちに駆け寄ってきた。



「おい神崎どうしたんだよその手!大怪我じゃないか!!」

「ん、まあちょっとな」

「いやいや!3日も休むほどのことがちょっとなわけないだろ」


 クラスの奴ら(主に男子)から怪我の原因等の質問攻めにあい、事故ったということにして話をごまかすと、自分の席へと座る。その隣には東雲が既に座っていた。


「突然3日も休んだと思ったらなんだその怪我は。どうせ事故とか言うのも嘘なのだろう?お前がそんなへまをやらかすはずはない」

「無駄に鋭いな。まあ、そうだよ。ちょっと腕を刺されてな」


 そこで俺は簡単に経緯を説明する。すると東雲が複雑そうな表情をした。


「神崎裕人が他人を庇うとは・・。その子、何者なんだ」

「何者も何もこの前会っただろ。バイトの同僚だよ」


 思い出そうとして目をつむる東雲。やがて思い出したのか手を打った。


「あの子か。まあ、その子に大事がなくてよかったが神崎裕人。お前少したるんでいるんじゃないのか?」


 質問の意図がわからない俺が首を傾げると、東雲はため息をつく。


「いつものお前ならその状況になっていたとしても無傷で仕留められていただろう。それなのにそんな大怪我をして・・。私にやられる前に倒されたらどうするんだ」

「この前俺に瞬殺されたくせに何を言ってんだ。東雲なんて片手でも十分だ」

「ぐっ・・舐められたものだな。今すぐねじ伏せてやりたいが、残念ながら私は怪我人と戦うつもりはない。命拾いしたな」


 そう強がりを言う東雲だったが、怪我をしている手が気になるのかちらちらと見ているのがわかった。


「痛くないのか?」

「まだ少し痛むけど触れなければ大丈夫だ。まあ神経まで刺さっていなかったのが不幸中の幸いだったか」



 神経にまでいってたら恐らく片手を失うことになっていただろう。それだけは本当に良かった。 

 俺がそんな話をしていると突然東雲が耳を塞ぎ始めた。


「・・・?何してんだ」

「私は痛い話は嫌いなんだ。聞いているだけでも体が縮こまってしまう」

「・・・おいおい、いっつも人をぶん殴ってたくせになに言ってるんだよ」

「それとこれとは話が別だ。とにかく!そういう痛かった話はしなくていいからな!」

 

 そう言って東雲は教室から出て行ってしまった・・・が、チャイムが鳴り慌てて戻ってくる。

 人を殴るのは好きなのにその手の血なまぐさい話が嫌いなんて色々と矛盾してるなぁ・・。 東雲には謎がたくさんあるかもしれないと思った瞬間だった・・・。


________

____

__



 昼休み。俺は高崎と共に学食へとむかう。東雲は何かあるのか、昼休みになるなりどこかへと姿を消した。


「いやぁ、でもほんと神崎が無事でよかったよ。3日も休むなんてさすがに心配したんだぞ」

「それはすまなかった」


 高崎に腕のことを色々と聞かれ、本当のことを言うか迷っているところへ、有栖川先輩と木島がやってきた。


「あ、神崎」

「神崎くん。良かった、元気そうで」

「先輩。心配かけてすいません。それとしばらくアルバイトにいけないことも」


 俺は先輩に頭を下げるが、先輩は全然そんなこと気にしないでいいよと言って俺に頭を上げさせた。


「あなたは沙羅を守ってくれたんですもの。だからむしろ私が感謝したいぐらいなの。

 だから神崎くん、今度二人でゆっくり__」


 その時、木島がわざとらしく大きく咳払いをしたかと思うと、先輩と俺のあいだに割ってはいる。


「私たちも今からご飯なの。良かったら一緒に食べない?」

「いいのか?」


 俺がそう言うと先輩も木島も二つ返事で了承してくれる。横にいた高崎が思わず飛び上がって喜ぶ。


「生徒会長と一緒にご飯を食べられるなんて・・今日はなんてついているんだ!!ところで、そちらの君は誰かな?」


 高崎が木島を値踏みするようにして見つめる。俺がバイトの同僚だよと紹介すると、恨めしそうな表情で俺を見てきた。


「神崎ぃ・・・。お前こんな可愛い子と一緒にバイトしてたなんて人生なめてるだろ!?」


 そのままいつもの癖で高崎が俺の腕を叩く。しかしそれは怪我をしている腕だった。


「痛っ!」

「神崎っ!?・・・ちょっとあんた、神崎にいきなり何してんのよ!」


 木島が俺の腕をさすりながらすごい剣幕で高崎を睨んだ。


「わ、悪い!ついいつもの感じでつっこんでしまった!」

「気にするな。だが気をつけてもらえると助かる。まだ傷口が完全には塞がってないらしくてな」


 そのまま少し変な空気のまま俺達は席へと着く。

 席に着くまで木島はやたらと俺の周りに人が来ないように警戒していた。 多分腕にぶつからないように気遣ってくれたんだろうけど、ちょっと過保護すぎな気も・・。

 木島はまださっきのことを怒っているのか時折高崎のことを睨んでいた。そこへ、高崎が耳打ちしてくる。


「な、なぁ・・あの子さっきからずっと俺のこと睨んできてるんだけど・・・やっぱりさっきのが悪かったのかな」

「いや、彼女は元々男性嫌いらしいから高崎に限定しているわけじゃないぞ。ただまぁ、さっきのこともあるだろうな」


 俺は高崎に軽く木島が男が嫌いな理由を教えると、高崎はなるほどな・・と言ってわかってくれたようだった。

 

「というか私はそいつに合席を許可した覚えはないんだけど」

「え!?そんなこと言わないでよ~。俺と君の仲じゃないか」

「は?なにこいつ・・気持ち悪い」


 そのまま木島が席から少し遠ざかる。高崎は木島が本当に男が嫌いということが理解できたみたいで、頷く。


「神崎、こっちで一緒に食べましょう。なんかそいつと一緒にいると空気が汚れそうだわ」

「ひどっ!俺汚くないよー綺麗だよー」

「そうよ沙羅。あまり人を悪く言っちゃダメよ」

「だってこいつ、さっきから私の胸ばっか見てきて気持ち悪いし・・それに男というだけで吐き気を催しそうなんです。だからあんた、私達がご飯食べている間、息止めていてくれない?」


 昨日から態度が軟化していたので忘れかけていたが、木島は超がつくほど男が嫌いなんだった。

 俺は木島に悪い奴じゃないから近くに置いてあげてくれと頼むと、かなり嫌そうにしていたが、


「まあ・・神崎がそういうなら」

 

 と言って渋々了承してくれた。その言葉に胸を撫で下ろす高崎。

俺は高崎に、これいじょう嫌われたくなかったらいやらしい目で木島を見るのはやめろと言うと、高崎は頷いた。

 そのままたわいもない話をしながら食事を続けていると木島が突然こんなことを言いだした。


「そうそう神崎。私、893部に入ることにしたから」







 


  

  

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