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亜佐美の場合 ⑦妻の凄みに屈する?

数日後、結局 私は一哉の家に向かっていた。


里香子の誘いを断り切れないのもあったが、どこかで、一哉との事を終わらせる

いい機会なのかもと思っていたのかもしれない。

どうせ、いつまでも続けられる関係ではないし・・・と。


そして、もしかしたら私と一哉の関係を里香子は知っているのかもしれないとも

考えた。

さらに、私が卵子の提供者だと彼女は知っている可能性もある。


きっと、全ての事を承知の上で、私を呼ぶつもりなのだ。

そう思うと、足が震える思いだが、私は一哉の家に向かった。


一哉のマンションは、三方を公園で囲まれた瀟洒なマンション。

子供の教育環境もよく、里香子の実家からも近い。

実家で週4回ピアノを教えていると言う彼女は、恵まれた主婦と言える。


『いらっしゃい。来てくださって嬉しいわ。』


満面の笑みで、私を迎える里香子。

その笑顔にどんな気持ちを隠しているのか??


南面の広いリビング。家具はヨーロッパの輸入物。

私は、一哉の言葉を思い出す。


(うちは、居心地悪いんだ。オレはもう少しラフにしたいんだけどね・・)


その容姿からは想像つかないが、下町育ちの一哉は、私の殺風景なワンルームが

落ち着くと話す。

二人で、ラグの上で寝転がって、ただテレビを見ているのが好きだった。


(??好きだった・・・もう過去形になってる)

私は苦笑する。


しかし、完全武装のようにおわしますヨーロッパ家具のリビングでは

くつろげないのかもな・・一哉を少し可愛そうにも思った。


里香子は、そんな一哉の気持ちを知ってか知らずか、得々と

自慢のカップに紅茶を入れてくれた。

テーブルの上には、フレンチかと思う創造的な料理が並んでる。


『ごめんなさい、夫は出張で留守なの。どうぞ、遠慮なさらず召し上がってね。』


当然だ、一哉は合わす顔がないだろう・・・

そして、聞きもしないのに、一哉とのなれそめを話し出す。

彼とは幼なじみで、同学年一のモテ男の一哉を射止めるのにどんなに苦労したか

と楽しそうに話していた。

ダイエットとプチ整形で、某大学のミスになり、やっと一哉が振り向いてくれたとか。


なので、絶対彼の子供が欲しかったと話す里香子。

男の血さえ継いでいれば、自分のDNAを引き継がない子供でも納得なのか?

と聞いてみたかったが、それはタブーだろう。


しかし、そんな里香子だから、少々の浮気などで一哉を手放すはずがない。

結局最後まで、望を助けた恩人としてもてなす里香子に、妻としての凄みを感じたのは

私だけか・・・。心配した修羅場もなく、その日は終わった。


数日後、カフェで一哉に会った私。

お互い、別れを意識した。彼にすると当然だ。最後にと前置きして言う。


『こんな事言って、いいかわからないけど・・』

『なに?』

『最近、望、君に似てると思って仕方ないんだ・・』

『・・・・』

『ひょっとして・・君の卵か?』

『・・・・』


私はあいまいに頷いた。その時の一哉の驚いた顔を、私は忘れないと思う。

彼とはそれで終わった・・・


そして、一年後、私は結婚する。

相手は里香子のいとこの内田だった。


























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