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美咲の場合 ①天使な彼

長谷川美咲が、生方真彦に出会ったのは、

東日本大震災のボランティア参加ツアーだった。


美咲は2泊3日のボランティアに参加。

目の前の惨状に呆然とするが、何かこんな自分でも役に立つことが

あるのではと思い立って来た。

それは、友人に恋人を奪われた傷心旅行でもあった。


最初は外国に一人旅するつもりだったが、未曾有の大惨事に見舞われた人達に

接する事で、ちっぽけな傷心など吹き飛ぶのではと期待したからだ。


人のためと言うより、半ば自分の為の偽善旅。

そんな自分を打ちのめすような景色が目前に広がっていたが、

一人の若い男性の姿が目に入る。

飄々と跳ねるように動き回る若い彼。落ち込んでいる住民を

次々に笑顔にしていく爽やかな姿にいたく感動した。


愛くるしい顔、少年のような瞳。

随分年下ではと思いながら、アドレスを聞き出すことに成功。

ボランティアツアーの帰りのバスでは隣に座る事にも成功した。

真彦の方もまんざらでもない様子だった。


失恋したのに、もう?私って案外厚かましい・・・

と躊躇する気持ちもあったが、ぐずぐずしてるとまた誰かに盗られてしまうと

半ば脅迫観念に押されていたのだった。


帰宅後は、早々に交際に発展。

医学生と言う彼は、ボランティアが趣味と言う。

海外青年協力隊にも参加したと話し、肌の色の違う現地の人との写真も

見せてくれた。

人に尽くすことに喜びを感じる高潔な人間、そんな彼に好感を持ち

幸せな気分に浸っていた美咲。

医学生だから将来有望だし、30代目前の自分には眩しいくらい。


恋人を失った私を救ってくれた天使の真彦君♪


彼女は本心からそう思っていた。


その数日後、友人の沙織から結婚式の案内状が届く。

美咲の彼吉岡を奪った親友。その彼との結婚式に自分を呼ぶ傲慢さに

心底腹が立ったが、美咲は真彦の存在に力を得て結婚式に参加を決意。


当日は、これ以上ないくらいに着飾り、髪だって盛りたくって、

にこやかに、自分こそが晴れ舞台のように登場してやった。


その姿に、好奇の目をよせる参加者もいたが、そんなの気にせず

堂々とした。


そして式の帰り、これみよがしに若々しい真彦に迎えに来させて

見栄をはるつもりが、ヨレヨレジーンズでラフな格好で迎えに来たのにがっくり。


しかも、キャバ嬢のように盛り上げた髪が車の天井につかえるのが

可笑しくて、美咲は笑い出す。


何やってんの・・私。あんな奴らに見栄張って・・オカシイったらない。


真彦のそばにいると、自分は素直でいられる。そう感じていた。































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