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真希の場合 ⑦顔を奪われた女

包帯をグルグル巻きにした女に会った帰り、

真希はショックで寝込んでしまった。

彼女の風貌、話があまりにショッキングで嘔吐したのだ。


女は上野風花と名乗り、渋谷を探していると言う。

そして、渋谷に自分の顔を返してもらいたいと話した。


それはどう言う事なのかと真希が聞くと、

上野は3年前に北陸の崖近くの国道で交通事故を起こしたと言う。

被害者は渋谷とマネージャーと思われる男性。男性は即死。

互いの車は大破し、渋谷も上野自身も大けがをした。

それから意識不明で病院に運ばれ、数日は生死をさまよった。


しかし意識を取り戻したら信じられない事が起きる。

互いの顔が入れ変わっていたのだ。事故現場に落ちていた互いの顔が、

さえない風貌の渋谷の顔が上野につけられ、華やかな上野の顔が

渋谷につけ変わられていた。


渋谷は何食わぬ顔で、病院を立ち去り行方をくらました。

上野はそれからずっと渋谷を捜し続けているのだ。

さえない渋谷の顔などとうてい受け入れがたく、包帯を巻いているらしい。


上野は、真希に渋谷の家を教えて欲しいと懇願した。

真希は自宅は知らないし、そんな親密な知り合いではないとつっぱねたが、

上野はしつこく聞いてくる。

真希は恐ろしくなって逃げ帰ってきた。


それから外に出ることも恐ろしく、仕事も有給をとって部屋にこもっていた。

部屋から外をうかがい、上野の姿が見えぬかと心配した。

ある日、中野が真希を心配してマンションに来た。

ドアを開けたとき、中野は真希の顔を見て驚いた様子だった。


オートロックで声を聞いたはずなのに中野は言った。


『ごめんなさい、人違いです。目黒さん引っ越されたんですね・・』

『え?何言ってるの?私、真希よ。』

『いや・・俺の知ってる人じゃありません』

『待って・・私よ、真希よ。』

『真希?ウソだろ?本当はそんな顔だったのか?』

『・・・・?』


渋谷を避けている間に、真希の顔は元にもどっているのかと言う中野。


『なあ、渋谷先生の所に行けよ。じゃないと俺たち終わりだ。』

『・・・・』


美しくなった自分にふさわしくないと言いたげな中野。

上野の話をしても、渋谷に心酔している中野は聞く耳を持たない。

引きずるようにして渋谷のサロンに連れて行かれた。


『あら、いらっしゃい。真希ちゃん、久しぶりね。また元に戻っちゃったのかしら?』


渋谷は魔女のように笑う。

中野が押さえつけるように真希を寝かせた。抵抗しながら真希は必死で言った。


『あの、上野風花って人知ってますか?』

『・・・その人が何か?』

『夕子さんに顔を取られたって言ってました・・本当なの?』

『・・なかなかクレージィな女ね。たとえ本当だとしても、

 もうとっくに変わってるからわからないと思うわ。』


真希は自分の顔が変わるように、もうすでに渋谷は上野の顔も捨て去ったのだと

感じるのだった。

























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