真希の場合 ④仰天の恋人
顔が変わると人生が変わる。
以前は質素な生活を送っていた真希。
渋谷にメイクを受け、自己に目覚めたかのように
髪型、服装、メイクを変えていった。
そして自分は変わらないつもりが、周りの反応が変わるのを
肌身で感じる真希だった。
その頃、職場の同僚が結婚。
その披露宴で中野と言う男性と知り合った。
本当は隣の披露宴に招かれていたのに、間違って入り込み真希の隣に座った中野。
偶然にも同姓の招待客は、当日急用で欠席してしまっていたのだ。
しかし、途中で気付いた友人に呼ばれて慌てて立ち上がった時に、
真希のドレスにシャンパンをこぼしてしまった。
『ごめんなさい。ああ、申し訳ない・・。』
平謝りの中野に好感を持った真希。
中野はクリーニング代を請求してくれと名刺をくれた。
有名漫画家のアシスタントをしているようだ。
数日後、名刺の連絡先に電話をする真希。
たいした額でもないので、クリーニング代はいらないと言うつもりだった。
『いや、それだと僕の気持ちが収まらない。よかったらランチでもしませんか?』
『え?でも・・・』
『パスタの美味しい店があるんですよ。一緒に食べませんか?』
半ば中野の強引さにおされた形だが、彼に好感を持っていた真希は
素直に誘いに応じた。
そしてそれがきっかけで交際を始めた二人。
渋谷はいち早く真希の変化に気付く。
『あ~ら、真希ちゃん。彼が出来たでしょ?』
フラダンスの振りをおさらいしていた真希は、恥ずかしげに頷いた。
渋谷は、自分のメイクのおかげだと思っているだろう。
『ね、相手の人、どんな人?どんな仕事してるの??』
漫画家のアシスタントだと言うと、渋谷は神妙な顔をした。
『ね、真希ちゃん、その人、私のサロンに連れてらっしゃい。』
『え?どうして?男性なのに・・。』
『男性でも一緒よ。顔で運勢開ける場合だってあるのよ。』
『ええ~ッ?』
渋谷の言葉に、半信半疑ながら真希は中野の言葉を思い出していた。
万年アシスタントの中野。師匠の漫画家の荒川やその家族に、買い物からペットの世話まで
頼まれる生活にうんざりしていた。
先日結婚式に出席した後輩の足立は、某雑誌でデビュー、
華々しく新人賞に輝いている。
師匠には軽んじられ、後輩にも追い抜かれた彼に手を差し伸べて
あげたいと思う。
最初は一笑していた中野も承諾し、渋谷のサロンに来た。
そして数時間後出てきた中野はまるで別人で、真希は仰天した。




