表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/68

真希の場合 ②魔女の館

後日、渋谷にもらった名刺のサロンに行ってみる真希。

そこは、何の変哲もない古いビルの中にあった。

目立つ看板もなく、隠れ家のようだが、安っぽい造花で囲まれる室内を

想像した。

渋谷本人もメイクが上手であか抜けてるのに、何か泥臭い。

どこか寒い港の風景を背負ってる雰囲気があった。

元演歌歌手と言うだけある。


しかし、ドアを開けるとまるで別世界?

眩いばかりのシャンデリア、薔薇の香りが鼻をつき、渋谷本人のように

妖しげな空間だった。


『いらっしゃい、お待ちしていました。』


白衣を着て微笑む渋谷は、まるで魔女のようで、真希は正直言うとちょっとぞっとした。

これから何か儀式が始まって、自分は八つ裂きにされるかも???と

あらぬ空想が浮かぶのだ。軽はずみに誘いに乗った事を少々後悔しだす。


(しかし、今更帰れない・・・。)


観念したかのように、寝台に横たわる真希。

それから気を失うほどの未体験ゾーンに突入した。

自分に何が起こってるのかもわからない。

闇から何本もの手が伸びてきたかのように思えた。

絶え間なく、顔が弄ばれるようにいらわれる。

時折、渋谷のハスキーな声が夢うつつに聞こえてくる。


『真希ちゃん、今までお手入れしてこなかったのォ?』

『もう、顔が半分になるくらいむくんでたわよォ?』

『そうら、顔貼り替えるよ~ォ!!』


顔を貼り替える???まさか~~ッ

しかし、起きあがりたいのに身体が動かない。

自分の顔がはがされ、物干しでペラペラ風になびく絵が頭の中に

浮かぶんだ。


そこで目が覚めると、ようやく顔の手入れがすんだみたいだった。

渋谷は汗だくになっている。


『真希ちゃん、見違えたわよ~ッ。ようやく土台が仕上がった。』


へェ?まだ土台ですかい?


しかし真希は、鏡に写った自分の顔に衝撃を受けた。

渋谷の言葉通り、顔が一回り小さくなり、両面が均等になっている。

目は我が人生最大に大きく、唇はきりっと上がって引き締まり、いつものようなヘの字でない。


(何?これ・・・私?ウソみたい・・キレイ・・かも?)


『夕子さん、まさか、私の顔貼り替えたの??』

『はあ?何、バカ言ってるの・・ピーリングして、むき身顔にしただけよ。』


渋谷は、メイクの仕上げをしながら笑い出す。

メイクをした顔を見て、また真希は腰を抜かす程驚いた。

見知らぬ女に見えた自分。メイクだけでこんなに違うなんて・・・


しかし、また落とせば元のさえない自分に戻ると思ってると、

渋谷はささやくように真希に言った。


『真希ちゃん、私のメイクはね、落としても変わらないのよ。手入れ次第で

 ずっとキレイなままでいられる。魔法のメイクなのよォ。』


そう言って笑う渋谷は、やはり魔女だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ