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亜佐美の場合 ⑤神様の領域

そんなある日、夢を見た。

熱帯夜の寝苦しい夜。


玄関を開けると、そこに見慣れない小学生くらいの男の子が立っている。


『どちらさまですか?』

『あの・・・僕、藤本望です。』


はにかむように話す男の子。少し癖毛の可愛い顔立ち。

私は何も言えず、立ちつくす。


『あの・・・おばちゃんが、僕の本当のママだよね・・。』

『!?』

『・・・ママ、会いたかった。』


男の子は、私にすがりつき泣き出した。

私はフリーズして、しゃがみ込む。どうしたらいいのかわからない。

しかし、そう思う意思とは裏腹に、彼の背を抱きしめる私の目には

涙が溢れていた。


『私も、会いたかったわ・・。』


口が勝手にそう言う。

何言ってるの、母性なんて皆無のくせに・・・迷惑だって言ってたじゃない!!

心ではそう叫んでるのに、私はしっかり男の子を抱きしめていた。

その肩を誰かが叩く。


『ダレ!?』ふりむく私・・


そこで目が覚める。額には汗。ベットのシーツがぐっしょり湿っていた。

(夢かァ・・・何かリアルな夢)

疲労感に頭がボーっとする。

私に母性?嘘ッでしょうォ・・そう思っていた。


ある雑誌の記事によると、現在タイでは受精卵の識別も実施され、

男女の産み分けもすでに可能となっているらしい。

実際希望するのは圧倒的に女の子が多いと聞いた。


よくよく考えてみれば、一般的には女の子は父親に似ると言うから、

卵子提供者の影響を考えての事かもしれないと思った。


だったら、なぜ、一哉の子供は男の子なのか?

私はそれとなく一哉に探りを入れる。


『男女の産み分けはオプションだから・・お金がかかるんだ。それに・・』

『それに?』

『里香子がいやがった。それは神様の領域だから、お任せしたいってさ。』

『・・・・』

『うちはまだ運がよかった。聞いた話では、何回も受精しなくて、どんどん超過料金とられる

夫婦もたくさんいるらしい。』

『・・・』

『・・なに?そんなこと聞いてどうすんの?興味アル?』

『まあ、将来の参考のためにね・・』

『ああ、医療関係だから?熱心だね。そんな勉強家だっけ?』

『もう~。』


私は話題を変える為に、ビールを飲む。

一哉は当然の事ながら、二人でいる時は、妻や子供の話題はして欲しくないはずだ。

私だって同じ。でも、気になってしまう。その気持ちをどうすればいいのか

わからなかった。


それから数日後、雨の夜、夜勤をしていた私は

一本の電話を取る。

救急患者の受け入れ要請。患者は一哉の息子、藤本望だった。





















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