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春馬の場合 ⑨運命に流されて

火災の火元は、奥の寝室。

隆史と操がもう夫婦同然にして寝ていた部屋からだった。

二人の仲を裂くように火が燃えた跡が見つかる。

隆史と操は身動きも出来ず、燃えさかる火で焼死したようだ。

二人の子供の真美も隣の部屋で息絶えていた。


教団の誰もが、隆史の寝煙草が原因だと話すが、

隆史が喫煙者だと言う噂はなかった。

明らかに誰かをかばう様子だったが、誰も口をつぐみ

打ち明けようとはしない。


(美緒様にしたら、当然だ。)


教団の誰もがそう思っていた。

操の傲慢な態度にみなが憤怒していたから。悔やみの言葉も出ない。

そんな周りの意図とは別に、美緒は見るのもはばかれるほど憔悴しきっていた。


病院に駆けつけた春馬に、うつろな目を向けて

『私はもうダメ・・・。』と泣くばかり。それでなくても小柄な美緒が

一回りも小さく見えた。


すっかり神通力を失った教祖美緒の周りからは人がいなくなってしまった。

教団は自然消滅するかのように解散。

隆史が手がけた樹木葬用墓地公園は民間企業に買い取られ、

教団の土地も売買され、墓地公園用の駐車場になった。


それから、美緒は蒼馬を連れて海外に移住したのだ。

晴れ晴れとした顔で、『私はやっと自由になれた・・。』と

空港で微笑んだ美緒を春馬は忘れないだろうと思う。


その後、美緒はカナダで地元の男性と再婚。

どこにでもいる普通の母親で、青い目の妹の写真も送ってきた。

男性は、美緒の過去は何も知らない。


春馬は医師になり、無医村を転々とする。

ある大学病院でインターンをしていたが、何度か神通力で

瀕死の患者を助けたい衝動を抑えるのに苦悩してしまった。


無医村なら・・と人もイヤがるような離島に流れ着いたりするが、

結局あの医師は変だ・・と噂され立ち去るを繰り返していたのだ。


今度は、都会の片隅に隠れるように医院を開業。


真由はそんな春馬のそばについて看護師として支えていた。

春になったら、二人の子供が産まれる。


春馬の父親が誰であるかはやはり今もわからない。






















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