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春馬の場合 ⑤母帰る

それから春馬にとって慌ただしい日々が続く。


朝は滝に打たれ、『どうすればいいんだ。どうすればいいんだ。』

と口をパクパク唱え続ける。

しかし祈祷の間では、別人のようにふるまい、

夕方は死んだように御簾から這い出てくる春馬。

夏休みは終わりを迎えても、一向に人の流れは収まらず、

年若い新教祖に、みな好奇の目で寄ってきた。


そして二学期が始まったのに、学校に行けなくなってしまった。

心配した担任の小原が教頭と共に教団に訪問する。

教頭は、母親の美緒の担任だった。まして優等生だった春馬には

普通の学校生活をさせてあげたいと願っての事だった。


しかし教団幹部は、二人を門前払い。

春馬に会わせようともしなかった。


『教祖である母親の美緒様の帰るまでです。こちらの事情を察してください。』の一点張り。


どうなってるんだ、この教団は・・・苦々しく二人は帰るしかなかった。

春馬自身も夢の中を彷徨うように、今の自分に現実味がない。

普通に学校に行く事を忘れ、日々を送っていた。


そして夏が過ぎ、秋が暮れようとしていた頃、

突如、美緒が帰って来たのだ。


美緒は、教団の前で門を叩く。車でふもとまで来て歩いてきたようだ。

防犯カメラを見ていた警備の岡村が見つけ、幹部達に連絡したら、

門までみんなが飛んできた。


『美緒様、どうなさいましたか!!』

『・・・・』


疲れ切ったのか、美緒はみんなの顔を見ると倒れてしまう。

そして、内密にふもとの医者を呼んで診て貰ったら、美緒は妊娠していた。


(あの山下とか言う男の子か???)


ああ、それじゃあ、信者が増えない・・・

口にはしないが、みな腹の底ではそう思っていたよう。


俗世の男と交わり、俗界の凡人に成り下がってしまった。純潔でなくなったら価値がない。

そう思われても仕方ない。

しばらくは、春馬でいこうか・・と誰もがそう思っていた。


美緒が帰ってきたことは内密にして、春馬を教祖として奉り、

教団を維持していこうと決定した。

真由の母親操に世話を任せ、教団の離れの部屋に美緒を隠したのだ。

春馬は、その事実を知らされる事もなかった。


操は、自分にもようやく運が回ってきたと思う。

美緒の世話をして、教団の中で権力を握りたい、そう思うのだ。


そして数日後には、今度は山下隆史が教団の前にいた。

美緒を追ってきたのだった。















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