表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/68

美緒の場合 ⑧予想外の結末

その時、誰が見ても英里子の仕業と思われるのに、

確たる証拠がないばかりに、犯人逮捕にいたらなかったのだ。


それから職を転々とした雄太は、行く先々で

英里子と思われる陰に怯えながら生きてきたと言う。


その話を聞き、美緒は雄太の人生を思うと胸がつまる。


(この人は、私が守る!!)


暮雨だの涙を流しながら、彼女は誓うのだった。


そして翌日、二人で新居を探す為に足早に歩いていた時、

後ろから誰かの気配を感じた美緒。

振り向くと、見知らぬ女が立っている。その手には光る物が・・


『アッアッ・・・。』


次の瞬間、勢い走ってきた相手に、脇腹を刺されて倒れ込んだ美緒。

咄嗟に雄太をかばったのだ。


『美緒、美緒~ッ!!』


雄太の声が遠くに聞こえた。


そして、目覚めると病院。ベットの脇には雄太が座っていた。

丸二日間眠っていたらしい。生死を彷徨った。

美緒を刺した英里子は現行犯で捕まり、警察に連行されたと雄太が話す。


(まるで夢のようだ・・・)


英里子との悪夢はこれで終わるのか?とも思うが、

数々の余罪があるとして、英里子は今度ばかりは免れないだろうと

雄太は淡々としていた。


長い旅が終わったような清々しい気分だと話す。

そして数ヶ月後、雄太と美緒は結婚した。美緒は新しい命を宿していたのだ。


これから二人の新生活が始まると思われたある日、

雄太の父親勇次から連絡があった。


『至急、アナトリアムに戻ってくれ。』

『父さん、俺はもう戻るつもりはないんだ。』

『いや、お前が必要なんだ、戻ってくれないか。』


コミュニティのアナトリウムの代表、神木が急死した。

ナンバー2の座に登り詰めた雄太の父親勇次は、新しい代表に収まったのだ。

しかし、閉鎖的なコミュニティの中でも派閥があり、

心よく思っていない人物も多いと勇次は言う。

そして神木の死が突然だったので、毒殺では?と言う憶測まで広まった。


しかも、神木の忘れ形見の優子は、雄太の母親由希子との子供だという。

由希子自身はコミュニティを出て行方知れずだ。

その優子の後見人として、勇次がコミュニティの中の権力を握った形である。


雄太は、心許せる人間にそばにいて欲しいと願う父に逆らえず、コミュニティに

戻ってしまった。

美緒もアナトリウムに行くと話したのに、息子の蒼には、普通の生活を

させたいと雄太は話して譲らない。


今では、週末だけ出張のように、美緒の元に戻ってくる雄太。

肩書きは(株)アナトリアムの広報部長。羽振りもいい。


しかし、美緒は二人で暮らし初めた頃のあの危うい日々を

懐かしんでいるのだった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ