由起夫の場合 ①今年の目標
甲斐由起夫は、年頭にいつもその年の目標を書く。
仕事の目標、個人の目標・・計画を綿密に立てるのだ
そしてソレをまとめたのが、十年年表
10代から20代編
20代から30代編・・
その目標が達成できたか否か○×をつける。
学生の時から続けてきて、志望校にも合格できた。
成績の順位まで、努力を重ねてきたのだった。
そしてそれなりの結果を得て、弁護士になることも出来、
それなりの収入も得ることが出来た。
結果には、自分なりに満足の行くことも多い。
しかし、一点だけ最近気がついたことがある。
40代目前で、結婚の文字がないことに今更ながら気がついた。
いまから段取りしても、結婚・出産に達した時、自分の年齢をはじいてみる。
(子供が成人したときに、自分は60代・・??)
ちょっと愕然とした。
それまで今の収入が維持できるかどうか?
それまで自分の気力・体力が持つだろうか?と自問自答する。
少し不安になってきた。
(今年は結婚したい)
いつしか、それが目標に加わった。
しかし今年こそ、今年こそ・・で数年すぎて43歳だ。
最近、腹違いの弟の陽介に子供が生まれた。
弟は何かにつけ要領が良く、小中高と成績もよくて女性にもよくモテた。
大学卒業後も大手企業に入り、美人の妻と職場結婚した。
父も継母と共に大喜び。孫はとにかく可愛いらしい。
そこで、由起夫ははたと思う。
それにひきかえ、オレは何をしているのだ???と。
司法試験3回目で弁護士になったが、仕事に明け暮れ
気がついたら40代だ。
一回り年下の弟陽介は、20代で家も購入。自分はマンションこそ購入したが、
帰省しても肩身が狭い。
40代で結婚したら、子供が成人する頃には60代だ。
今は晩婚化で、そんな事は珍しいことではないと思っていても、何か気になる。
28歳の頃、真美と言う彼女がいたが、仕事に夢中であった由起夫にしびれを切らし
さっさと別の男性と見合い結婚してしまった。
あの時、もう少し真美の方を向いていれば、今頃自分も幸せな家庭が築けたかもし
れないのに・・と後悔する。
結局縁がなかったのかもしれない。
後悔先に立たず、掛け違えたボタンは戻りはしないのだった。