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友梨の場合 ⑦その後の二人

悪夢のような反日デモの後、2ヶ月ほどで店は再開された。

しかし、休館していた間に、国営の地元デパートに客を奪われ、

閑散としていた時期もあったが、社員の努力や質のよいサービスで、

徐々に客も戻ってきたのだ。

友梨の会社も、挙式の契約が回復してきていた。


中国人は熱しやすく冷めやすい。しかし、性根の部分でまだ燻っているかのように

思えて、油断ならない。


その後、友梨は王さんと結ばれ婚約したのだ。

双方の両親は大反対したが、二人の意思は堅かった。

国同士の軋轢も、二人の愛情にはかなわないと・・・。


しかし、羽島葉子は心配していた。

不審な噂のある王さんと結ばれて、友梨が幸せになれるのかと。


そして、半年後王さんと友梨は結婚したのだった。

それから可愛い娘美音にも恵まれ、順風満帆に見えた。


ある日、友梨は職場で倒れてしまう。

仕事も忙しいし、子育てや家事に追われて疲れているだけと

思っていたが、末期の子宮ガンだった。


王さんと関わった女性は死を迎える?

そんな噂を思い出した。

夫にそんなことはとても言えない。育児にも協力的なよい夫であるし、

何より彼を心から愛していた。


それから、王さんは日本に転勤を申し出てくれて友梨は帰国した。

ガン治療を受けるとしたら、日本の方が進んでいるからと両親は

喜んでくれた。


王さんは、日本に留学経験もあるので、表面上は問題なく職場にも

とけ込み暮らしているかのように見えたが、沈み込む時が多くなる。

友梨はそんな夫を心配していた。


そして、ある日王さんはこう言った。

『友梨、僕たち別れた方がいいのかも・・』


友梨は、まだ幼い美音を抱きしめながら、夫に言う。

『イヤ、それは出来ないわ。あなた、あの噂を気にしてるの?』


王さんは、うつむきながら頷く。

『君を不幸に出来ない・・僕と別れた方がいいならそうする。』

『イヤよ、絶対イヤ・・・』

『・・・だけど。』

『あなた、人はいつか死ぬわ。あなたの噂が本当でも、あなたと別れて長生きするより、

短くても、あなたと生きる方が私には幸せなの。』

『友梨・・・』


王さんは友梨の手を握りしめ涙した。

その後、余命半年と言われていた友梨は、今も生き続けている。

愛する夫と娘に支えられながら、自分の命の炎を揺らぐのを

日々実感しながらも、幸せに暮らしている。










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