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友梨の場合 ④涙の挙式

新婦は、挙式2週間前に、ウェディングドレスを仕上げた。

試着した彼女は、感慨無量のようで大粒の涙を流していた。


今思うと、あの時彼女は何を思っていたのだろう?と思う。


純白のドレス、草原の風のように可憐な彼女に、誰もがため息した。

そして、カサブランカのブーケもできあがり、最後の仕上げのエステも終了。

後は挙式当日を迎えるのみとなった。

誰もが、幸せなカップルの誕生を願っていたはずだった。


そして挙式当日、晴れやかな顔で会場に来た王さん。

少し紅潮した顔が、とても素敵だった。

それに見とれてしまった友梨だったが、気を引き締める。


(いかん、いかん、新郎に見とれてどうするの?)


続々と関係者、招待客が来る。

しかし、肝心の新婦が来ない。

もう、準備にかからないといけないのに・・友梨は焦る。

スタッフが、新婦の携帯をかけてみたが、電話にでない。

事故にでもあったのか?

それとも迷いが出て、いやになったのか?


(どうしたのよォ!!イヤになっちゃったの?だったら、私にちょうだいよ!)


もちろん、心の中での叫びだが、最後の言葉はのみこむ。

花嫁が来ないことが、王さんにも連絡され、

彼が心底不安そうな顔をしているのを見ると、とてもそんな冗談は言えない。

(いや・・冗談ではないが・・それは今はどうでもいい)


そんな事より、新婦の所在を明らかにしないといけない。

スタッフが手を尽くし、必死で探し回った。

結局、挙式の時間がとうに過ぎてしまった時、最悪の事態がわかる。


花嫁は交通事故で死亡したのだ。

しかも、一人ではなく、横に男性がいた。

二人とも即死だったそう。


その事実を知らされた王さんの悲嘆は言うまでもない。

最良の日が最悪の日になったのだから。泣き崩れる悲劇の新郎になってしまった。


当初、男は花嫁の身内と思われていたが、同郷の幼なじみとわかる。

名前は張龍昇。

山奥の村で評判の美女だった新婦を、レイプして堕胎させていたのだ。

その噂は、狭い村であっという間に広がり、彼女は村を出た。

新婦が身内を呼びたがらないのはそのせいだったかもしれない。


そして出稼ぎに来ていた張は、彼女が都会のエリートと結婚すると聞きつけて、

挙式当日まで、邪魔しようとつけねらっていたようだ。


きっと新婦は、王さんに言えずに一人悩んでいたのだろう。

二人が可愛そうで、可愛そうで、友梨は涙が止まらなかった。





















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