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友梨の場合 ②気になるカップル

ほんの数年前まで、披露宴をイベントとする考えは中国には少なかった。


結婚式も、持ち寄りの食べ物、服もほぼ普段着でカップルの新出発を祝い、

披露宴も身内がほとんどで、年輩者は早期に流れ解散と言ったありさまだった。

しかしそれから経済的に豊かになった人達は、自らの結婚もイベント化する事に

目覚めたのだ。


パーティドレスも新調し、豪華ホテルで結婚式を行う人達も増える。

ベタすぎて赤面するような派手な演出も受けがよい。

晩婚化が進んだと言え、圧倒的に人口が多い分、日本より参入したブライダル事業は

好調だった。


友梨の会社も、日系の大手商業施設の中にあった。

買い物客が行き交う通り沿いに、ディスプレイされた華やかなウェディングドレス。

適齢期の娘を持つ客がまず興味を示す。

カタログだけでも・・と言いながら、サロンに入ってきた客と話をするのも友梨は楽しかった。

そのうちの何人かは、商談がまとまり、挙式に満足したと言ってもらえるのが

一番嬉しい。

その一つ一つの経験が、友梨の財産だと思っていた。


しかし、サロンの中では、日本人でなく、中国人らしくしろと命じられてる。

化粧は薄目に、日本語厳禁・会話は全て中国語。

名札も中国人風な名前にさせられた。


(沢田友梨ではなく、ユンリー?)


それだけが不満と言えば、不満と若い友梨などは思うが、

全てがあまりに好調なため、中国人の中に潜む反日感情への実感がなかったのだ。


ある日、一組のカップルが来る。

新郎は、日系企業のエリートサラリーマン、新婦はモデルかと思うほどの美人。


その時、王富春と言う新郎に、友梨は正直ときめいた。

今までにない感情を抱いてしまう。

理知的な眼差し、優しげな顔立ち。

どこにでもいる風貌なのに、好意を抱いてしまった。

それが、挙式の打ち合わせで顔を合わすたびに高揚してくる。


(担当かわって貰おうか・・でも・・・)

彼に直接会えなくなるのは寂しい。


(どうせ、結婚してしまう人だもん。心配ない。一生懸命がんばるわ。私。)


しかし、友梨は新婦に対して不安を覚えてしまった。

打ち合わせしていても、たまに考え事をしている。

心ココにあらず・・と言う風な態度が気になる。

何か事情があるのか?自分が好感を抱いている新郎が、

彼女と結婚して幸せになれるのか?


友梨は不吉な予感を、二人に抱いてしまった。






















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