友梨の場合 ①新天地に渡る
『新郎・新婦のご入場です!!』
イベントの山場、新郎新婦の入場。スポットライトで、二人の姿が浮かび上がった。
新婦はこの日3回目の衣装替えで、虹色に光る真珠色の衣装がよく似合った。
ウェストがキュッと絞ったデザインなので、
この日のために、マイナス10キロの減量に挑戦したと聞く。
無理な減量の為に、たまに倒れる新婦もいるので、
沢田友梨は、舞台のそでで心配そうに見守っていた。
フィナーレに、幼いときからの思いでの写真をバックに、
新婦が両親への感謝の手紙を読んだ。
頬につたう涙は、日本人も中国人も変わらない・・
友梨はそう思う。
友梨は、大学卒業後大手のアパレル企業に勤める。
その真面目な仕事ぶりで、
店長に推薦されたが、ただ服を売る仕事に飽きたらず、2年前に転職。
『人を幸せにする仕事』をしたいと願った友梨は、某ブライダル企業に入社。
そこでは、国内では晩婚化が進み、業績も頭打ち傾向にあるため、
中国に進出すると言う話を聞く。
友梨は、学生時代に習った中国語をいかせると思い、選抜メンバーに志願した。
その時、遠距離になるからと別れた彼がいた。
田中敏明、彼女の大学の先輩だった。
今は恋愛より仕事に専念したいとの気持ちもあったが、なんとなく
敏明との仲も倦怠感で、互いに違う方向を向いてる気がしたのもある。
別れを切り出すきっかけになると単純に思った。
しかしいざ別れを切り出すと、敏明は一応了承したのに、
ストーカーのように友梨につきまとうようになった。
相手が直接暴力に訴えない限りは、警察も問題にしてくれず、
友梨はイヤでも、中国行きを希望したのだ。
そして友梨が中国に渡る寸前に、
今度は別人のようにすました顔で、結婚式の契約に来た敏明。
相手は、友梨と二股で交際していた女性だと聞かされた。
(何なのよ~~。)
ウェデイングプランナーに、友梨を指名し、相手の女性といちゃつくのを
見せつけた。
彼女のお腹には、敏明の子供が宿っていたのだった。
(最低の男だった・・)
もし、あのままつきあい続けていれば不幸になっていたと思うとぞっとする。
そして、喜々として友梨は新天地である中国に渡った。
中国には、日本の何倍もの適齢期男女がいて、富裕層を中心に
子供に惜しみなく金を使う親はたくさんいるので、業績は大幅に上がった。
友梨は日々充実していたのだった。