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公彦の場合 ⑦彼女の正体

『丸山さん、今日は早く帰ってあげなさいよ。』

女性は、席に着くなりそう言った。


『はあ?なんで?』

『奥さんが泣いてる。困ってるからよ。』

『・・・・???』


公彦は、

名前も知らない若い女に、なんでそう言われるのかわからない。


『じゃ、理由は?なんで泣いてる、なんでわかるんだよ。』

『う~ん、それは話すと長くなるから省くけど、奥さん、息子さんの秘密を知ったみたいね。』

『・・・・?』


声を発する前に、公彦は、周りを見回す。

そこにいる誰もが聞き耳を立てている気がした。

しかし目の前の若い女性は、涼しい顔で、みそ汁を飲んでいる。

声を荒げる訳にもいかず、気持ちは次第にいらついてくるのがわかった。


『ねえ、君はこの前も失敬な事を言ったよね、何の因果でオレに失礼な事言うわけ?』

『・・・う~ん、知らない人にはついお節介で言いたくなる性格なのよ。私。』

『あのねえ~ッ!』


つい立ち上がりそうになるのを横で押さえたのは、公彦と同期の経理部の加藤。

若い女性に諭すように言う。


『冴子さん、食事中はお静かに。周りに迷惑ですよ。』

『ごめんなさい。つい、黙っていられなくて・・。加藤さんのお母さんはお元気?』

『ええ・・ありがとうございます。冴子さんの助言で、危機は脱しました。』

『そう、よかったわ。じゃあ、私は先に失礼します。』


冴子と言う若い女はそう言うと、息巻く公彦を後目にさっさと行ってしまった。


『丸山、冴子さんを知らないのか?』

『え?』

『我が社の守り神、内宮冴子様だよ。』

『はあ??』


加藤の話では、

内宮冴子は、秘書室に所属しているが、全社員の氏名・経歴・家族構成

性格などプロフィールのほぼ全てを記憶していると言う。

そして、予知及び透視能力にも優れているので、若い女子社員でありながら、

会社役員の相談役になっていると話す。


加藤は、冴子に身体の不自由な母が介護施設で虐待にあっていると指摘された。

話を聞いた時は半信半疑だったが、若い担当者に

陰で殴られたり、食事を満足に食べさせてもらえなかった事実が判明。

すぐ他の施設に移って、今は元気に暮らしているという。


『丸山も、冴子さんの指摘には逆らうな。』

『ええ~?』

『いいから、絶対そうしろ。』


不満気な顔の公彦。

その時、彼の携帯電話が鳴った。


『もしもし・・』

『あなた?涼介が・・・涼介が・・』電話の向こうで泣いている修子。

『どうした?涼介に何かあったのか?』

『涼介が、自殺しようとしたの。今、病院に搬送された・・』

後は声にならない。


公彦は頭が真っ白になった。












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