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公彦の場合 ⑤裕真の憂い

裕真には苦い思い出があった。

中学校の時、仲のよい同級生がイジメにあい、自殺したのだ。

当時は、自分を含めクラスの誰もが、害が及ぶのを恐れ傍観者になってしまった。

裕真は今でも、友達を助けてやれなかったのを後悔している。


学校側は、隠蔽体質であるのは当時も今も同じだろう。

おそらく、遺族は被害者然として、ただ学校側の対応を責めるばかりなのも同じ。

再三クレームを入れ、学校に来ては騒いで、その他大勢の生徒達の生活をかき回す。


(そんなに俺たちを責めないでくれ・・・)

次第に周りの生徒たちも遺族を疎ましく思い、同情する気持ちも失せてしまった。

結局、加害者生徒達は少年院に送られて事は終結する。


(あんな事はもうゴメンだ。何とかしなきゃ・・・)


裕真は、涼介を助けてやりたいと切に思った。


『今日はなに?珍しいわね、裕真君から電話くれるなんて・・・。』


修子は嬉しそうに笑う。

息子は瀕死のイジメに遭ってるのに、どうしてそんなに鈍感でいられる??

裕真は半ば呆れてしまうばかりだ。


若くに結婚して、やっと子供の手が放れ、時間もお金も余裕が出来た修子。

ふと気づくと、自分はまだ30代半ば・・・

しかし、公彦しか知らないなんて、修子にとって損をした気がする。


(私は、こんなにキレイなのに、勿体ない・・・・)と鏡を見て思う。


ネット世代なので、パンドラの箱を開けるのも早かった。

ハンドルネームしか知らない相手とデートしてみた。


そして、拙速な情事に及ぶ事も経験した。

公彦に対して、優しくなれるのも後ろめたさから。家事に抜かりはないと自負する。

それに、やはり、公彦を愛してるのには変わりない。

婚外恋愛は、別腹のデザートみたいなものだ。

自分に都合よい主婦の戯言だと言われても仕方ないが正論だ。


恋愛もどきは幾つかしたが、今は裕真に夢中。

若くて美しい男が、勲章のように思う。


『涼介くん、今のままで、明光目指せると思うよ。』

裕真は、事務的に話を切りだした。


『ソンなこと、呼び出してまで言う事?家に来たとき言えばいいじゃない。』

『・・最近、涼介、変わったこと無い?』

『変わったこと?』

『例えばさ、金遣いが荒いとか、服が汚れて帰ってくるとか、ケガしてくるとかさ・・』

『エッ???』

『最近、息子の様子がおかしいって思わない?』

『え???特に思い当たらないけど・・・あの子、いつも何も言わないから・・

 それがどうしたの?今日はデートじゃないの?』


修子はきょとんとしている。

裕真は、その鈍さに愕然とした。



























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