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公彦の場合 ③忍び寄る影

『何、ジロジロ見てるの?』

妻の修子はいぶかしそうに言う。

久々に3人そろった朝の食卓。修子と涼介が並んで座っている。


『ううん、きれいだなって思って』

『何言ってんのよ。バカね。』


我ながら、柄にも無いことを言ったなとは思うが、修子はまんざらでもなさそうに笑う。

隣の涼介は、無表情で黙々とパンを口に運んでいた。

その様を見て、

小さい時は、パパ・パパとまとわりついていたのに、

最近、この子から、アとかウ以外の言葉を聞いたことがないと公彦は思う。


(ちゃんと家族に目を向けないと、あなた、危険よ!!)


とあの女が言った事を度々思い出すが、

いったい何が、危険なのか・・・オレは何を見逃しているのか?

わからない・・・


でも、そう言われて、改めて妻の修子を見ると、髪はまるで十代の子のように

長くして、爪も何やらネイルサロンに行ってるらしく、きれいにしていた。


(そんな爪で、家事ができんのかよ?)


それから、たまにミニスカートをはいて、いそいそと出かけるとも

聞くとはなしに耳に入る。


駅前の商業施設の再開発の案件をいくつか抱えて多忙な自分は、

忙しさにかまけて、家族に対して思いが行き届かなかったのか?


息子に対しても、学校でどうなのか?と言うこともオレは何も知らないと

思うようになった。


しかし、だからと言って、何が出来るんだろう??

何をしたらいいんだろう???

公彦は、ただ考えあぐねていた。


そのスキマに、息子の涼介の変化に気づいたのは、家庭教師の山本裕真。

裕真は有名大学の学生で、容姿端麗、人気の家庭教師だ。

一見チャライ風貌であるのに、彼の教えた生徒は有名私立高校に合格率が

高いのも人気だった。

そして、生徒の母親とも密な関係を持つのも隠れた人気なのだ。

修子もその例外ではなかった。


修子は彼にご執心なのだが、彼にとってはサービスの延長であり、数の一人に

すぎなかったのだ。


その日も、裕真は熱心に数学を教えていた。

小鳥のように華奢な涼介を見下ろして思うのだ。


(なあ、お前の母親のあの時の声、知ってるか・・)


フフフ・・と思い出し笑いしそうなのをこらえるのが楽しい。

趣味が悪いと思うが、相手が望むから仕方ない。

結果オーライなので、生徒の成績さえ良ければノープロブレムだ。


なあ、涼介と彼を見た。

『あ・・・』その時、彼は気づいたのだ。涼介の異変を・・


『涼介・・・脱いでみろ。なんだ、この傷は?』

裕真は、涼介がいやがるのに無理矢理服を脱がせる。


肩に無数の傷跡・・・裕真は目を見張る。

『先生、お願いだ、お袋や親父には黙ってて・・。』

哀願する涼介は、声も出さずに泣いていた。

























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