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亜佐美の場合 ①秘密は彼女に聞け

『最近、気になる事があるんだ・・』

『なに?』

『こんな事、君に言っていいかどうかわからないんだけど・・』

『??』


昼下がりのカフェ、私は一哉の次の言葉を待った。


『うちの息子、だんだん亜佐美に似てくる気がして仕方がない。』


その言葉に彼女は確信した。


(あなたと私の子供よ。きっと・・・)


一哉には妻がいて、今年1歳になる息子さんもいる。

彼は、私がまだ学生の頃バイトしていた出版社の社員だった。


何かと親切にしてくれた彼と、自然につきあうようになり、

その関係は私が卒業するまで続いたのだ。


学生時代の甘い思い出、幸い彼の奥さんにも知られずに終わったし、

少なくても、自分は大丈夫だと思っていた。


それがある日、自分の働く総合病院に患者として一哉がやって来た。

受付でいた私は、目があった瞬間自分でも驚くくらい胸が高鳴った。


以前と同じく素敵だった一哉。彼の少し疲れた感じが好きだった。

それとなく聞けば、最近近所のマンションに引っ越してきたらしい。

子供が産まれたので、広いマンションに越してきたようだ。


不妊治療で、やっと出来た待望の赤ちゃん。

さぞ奥さんは嬉しいだろうと私は素直にそう思っていた。


しかし、一哉は軽い風邪のはずなのに、度々病院に来る。

今日は内科、明日は耳鼻科、明後日は眼科・・・と度々来る。

『今度会えない?』

真顔でそう言われると、断り切れない自分。

私達がまた元の関係に戻るのに時間はかからなかった。


『俺、つくづく思うよ、亜佐美とは相性ばっちりだなって・・』

一哉は私の髪をなでながらそうささやく。


妻子持ちの男の偽りの言葉とわかっていても私は彼に溺れた。


彼の妻は資産家の娘で気位が高く、某有名大学の元ミスだったと言う。

唯一のコンプレックスは、自然妊娠出来なかったこと。

美貌も富もあるのに、名医にかかっても思うように子供を授かることが出来なかった。


その挫折感は半端なく彼女を苦しめ、彼に多大なプレッシャーを与えたという。

『俺、単なる種馬扱い。つくづくイヤになっちゃうよ。』


排卵日近くになると、精の付く物を食べさせられる。

その前後はセックスレス。

その日は、どんなに疲れていても、夫の務めを強要させられた。


しかしその努力も空しく終わり、妻は生理になる度、ヒステリックになる始末。

そのうち、卵子の機能に問題があることがわかったのだ。

自力の妊娠はかなり困難だとか


『じゃあ、タイに行ってみれば?タイに行けばなんとかなるかもよ。』


彼にタイに行くことを勧めたのは私だった。






















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