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06

またあいちゃった(汗)

身辺バタバタしてて中々更新できず済みません(T_T)

どうか気長に…気長の上に気長を上乗せしてお付き合いくださいませm(_ _)m懇願

怒りに任せて大股に足を運んで突き進む。

片腕には布にくるんだ普段着慣れた衣服と仕込み武器一式。

歩く側から冷やかす様な口笛が響く。

「可愛いじゃん、何処の使い?用事が済んだなら俺と遊ばない?」

気安い声が掛けられて、苛立ちもそのままに人が殺せそうな凶悪な視線で応じる。

「死ね!色ボケ!」

その声にギョッとした相手は一目散に逃げ出して遠巻きに佇む仲間に駆け寄る。

「あの声…あれ、ジルだ。」

「マジかよ。嘘だろ。」

「任務か何かか?」

「さぁ、今は皇族の姫さんの護衛の筈だが…?」

「じゃ、何で~?」

「あれで中身がジルって、…どんな詐欺だ。」

ヒソヒソと兵士達の陰口が囁かれる。

聞こえてはいたが、今はそんな事を気にする余裕がなかった。

兎に角、今は早くこのお仕着せられたドレスを着替えて、一人で冷静に状況を考えたかった。

宿舎の扉を歩く速度の勢いに任せて開け放ち、食堂に脇目も振らずに廊下を突き進む。

自室の扉に手を掛けた瞬間に名を呼ばれ、意に反して身体が持って行かれる。

「ジルぅっ!」

ぎゅうと身体を締められて耐えていた気持ちが切れそうになる。

「放せ、シュタイン!」

自分でも驚くほど硬く冷たい怒声が吐き出されて、束縛が瞬間凍る。

「ジ…ル?どうし…。」

飛び付いてきたシュタインが一瞬凍って、何事かと顔を覗き込む為に緩んだ拘束を的確な体術ですり抜け、背後に回り暗器の針で首筋を打つ。

5つ数える間に膝を折ったシュタインに掛ける言葉も見つからなかった。

そのまま廊下に彼を放置して自室へ駆け込む。

直ぐに錠を下ろして長く深い息を吐いた。

手で無造作に濡れた頬を擦る。

「だから…嫌なんだ。自分勝手な奴は…。」


ジルの自室には他の兵士達とは違って扉には錠が取り付けられていた。

それは女性であるジルに対する指揮官の配慮だった。

ここ帝国要塞キューウェルでは軍任務の重要性と特殊性から従軍兵士の資質や能力を最も尊ぶ風習があった。

軍は師団毎に月替りで近隣の森林を巡回し、侵略の芽を摘む日々で、必然的に過酷な任務が課せられる為に、女性の正規軍兵士が赴任してくる事が殆どなくなってしまったのだ。

肉体的に波のある女性には、ここキューウェルの任務は過酷なのだ。

その中で未だ15歳と若いジルが特殊部隊長を務めるに至った経緯は、偏にキューウェルの総指揮を司る『ボス』の重用によるものだった。

歳に似合わぬ身をやつす術と薬物の知識、洞察力・判断力を買われて、戦災孤児で隣国の亡命者である為に傭兵という立場でしか従事できないが、ジルは懐深いキューウェル総指揮官を慕ってこうして軍に身を寄せていた。

周囲の兵士達もジルが女性である事は承知していたし、未だ女性と言うには幼い感は否めないが女日照りになりがちな要塞内においても自由に行動できるのは、総指揮官の庇護とジルの実力を知るからだった。

そんな中、ただ一人シュタインだけはお構いなしだったが…。

──流石に暗器の針で麻痺させるのは初めてだ…。後でボスに咎められるかもな…。

大きな溜息とともに部屋に足を進めると大きな鏡に自分の姿が写った。

それは潜入任務の為に置かれた大きな姿見で変装をする際の必需品だ。

全身の映る姿見など、軍の支給品でもなければ手に入れるのは難しい高級品だが、今は割ってしまいたい衝動を抑えるのに必死だ。

──思い出すだけで腹が立つ。

『よく似合う。見てご覧。』

そう言って指差されたのはこの鏡と同じ形の姿見に写り込んだ自分の姿で。

『どう弱味を握ってやろうかと思ったが、流石に驚いたよ。不思議な縁だな。よく傭兵なんかになれたものだ。』

頭に血が昇る。

「焼いておけばよかった。どうせもう…。」

左足を強く床に叩きつける。

それから背中に編み上げになったリボンを四苦八苦しながら解いて純白のドレスを脱ぎ捨てると部屋の端へ蹴り遣る。

「こんな物!」

髪を高い位置に止めている簪を掴み取って投げ捨てる。

ざらと音を立てて漆黒の髪が流れ落ちた。

ぐいと唇を拭えば手の甲に紅が掠れる。

『良いかよく聞け。この秘密が漏れたなら、それが其方からでなくとも道連れだ。其方の護衛の任は私を守ること。それは私の秘密を守る事と同義だ。私が帝都に戻ろうがこの条件は変わらぬ。』

「くそっ!こんな所であんな奴に!」

姿見には下着姿で髪を掻き毟るジルの姿が映り込む。

『暫く後、私が帝都に戻っても油断せぬ事だ。日々私を思い出して、私がしくじらぬように祈り、怯え暮らせ。』

──彼奴の秘密と道連れだと…。何で私がそんな柵に囚われなきゃならない。冗談じゃない。

それで頭に昇った熱が冷める。

「そうだ。こんな所に長居は無用だ。」

顔に掛かる真直ぐな髪を手櫛で整えると、頭の高い位置で一本に結い、布に包んでいた何時もの装束を荷解く。

麻のシャツに腕を通し、ズボンに脚を通す。

シャツの内側に手刀を仕込んで袖とズボンの裾を帯で巻いて止めるとそれぞれ暗器を仕込む。

使い込んだ革のブーツを履いて中に短剣を仕込む。

そしてあちこちに細工を施したベストを着込んで腰に帯剣しその上から丈の長い上着を着込む。

姿見で自分の容姿を確認すると、鏡を覗き込む。

擦った紅が口の回りに滲んでいた。

それをゴシゴシと袖で擦って落とし直ぐに寝台の下のトランクを引き摺り出す。

隣に擦り切れた使い古しの布の鞄を広げるとトランクの中身を無造作に流し入れる。

小さな机の引き出しから2・3品物を投げ入れると封をして肩から下げる。

そうしてもう一度鏡の前に立った。

「ここは良い所だった。が、潮時だ。」

そして目を閉じて胸に手を当てる。

──ボス、マム。一言もなく済みません。何時か恩返しします。

そして両頬を軽く叩いて気分を改めると踵を返した。

真直ぐに廊下への扉へ向かった。

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