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久々の更新です。てへっf^_^;)

しばらく待って返事は無かったが、予定より遅れてしまい、これ以上はもたもたしていられないと扉に手を掛けた。

丁度その瞬間、扉の向こうから金属音と同時に何かが壊れる音が響いた。

慌てて部屋へ押し入ると辺りを見渡す。

「ヴィーク様!何処です!?」

声を上げると返事の代わりか更に物騒な音が隣の部屋から聞こえて来て、躊躇なくそちらへ向かう。

「ヴィーク様!」

「湯浴み中よ、来ないで!」

隣の湯殿から鳥の羽ばたく音とともにエリサの声が響く。

──聞いてられるか!

構わずに押し入る。

直ぐに襲ってきた人物を見分ける。

「私です。エリサ様。どうかお静かに。」

言葉は丁寧だが構ってられないとばかりにエリサの腕を吊るし上げて部屋の隅の方へ放り出す。

腰のダガーを左手に身構える。

開け放たれた窓辺にヴィークの姿を見る。

その窓に鳥の羽音と茶色の翼が垣間見えた。

──鳥?奇襲か!?

直ぐにヴィークの側へ駆け寄ると、その手首を掴んで引き寄せ背後へかばう。

部屋に侵入者の気配が無い事を確認して行動に出る。

床には陶器の破片が散らばっていた。

ジルは空いた片手でヴィークの身体を有無を言わせず背に負って部屋を移す。

隣の寝室へ警戒を怠らずに移動すると、寝台の側でヴィークを下ろす。

ヴィークを背に庇ったまま、周囲へ警戒の視線を配りながら手短に問う。

「此処で、今何が?」

その問いは背後のヴィークへの問いだ。

エリサは取り乱した様子で、何事か譫言のように呟いて冷静さを欠いている様に見えたからだ。

──おかしい。侵入者じゃない。窓の外は切り立った岸壁でそのまま谷になっているから、そこから侵入はあり得ないし。矢を射掛けられる心配もない高さだ。あの影は鳥だったよな?しかし……まさか密書?

そう思い至って背後を振り向こうとした瞬間に首に何か巻き付いた。

「な、何?」

見れば自分の手に持ったダガーが切っ先をピタリと己の喉元に向けていた。

手はダガーを握ったまま背後から伸びた手で操られている。

「参ったな…取り敢えず、隠し持った手刀は必要ない。」

「え?」

聞き覚えのある声だ。

咄嗟にダガーを持つ手に力を込めたが、びくとも動かせなかった。

「な…んで?」

「どうせ神経系の薬か何かが塗ってあるんだろう?薬よりダガーの方が速い。意味は解るな?」

懐の手刀を掴んだ手を言い当てられた。

的確な推察だと関心半ば、一層混乱を来たす。

首に回っているのは腕だ。

背後から取り押さえられているのだと理解して初めてその感触の異様さに気付いたのだ。

「ジル・エス・ヴィーク…様?」

──間違い様が無い。この部屋には3人しか居ないのだから。

「そうか、同じ名だと言った最初に気付くべきだった。其方以上に適した者は居ないと確かに言っていたな。どうりで制止が効かない訳だ。」

溜息混じりの声が耳元に囁く。

「女…か。」

「嘘…男!」

殆ど同時に声が重なった。

咄嗟に色んな意味で頬に朱が刺す。

「動くな。無闇に人を傷付けたくはない。聞け。」

声はジルの挙動を確認するように少し間を開けて、聞く体制を感じ取った様子で続く。

「そなたの言う通り、私は男だ。だがそれ以外は何一つ偽ってはいない。産まれも育ちもな…。」

一度言葉を区切る、背後から微かに溜息の気配があった。

「エリサ、使いに行け。たっぷり時間を掛けて茶でも淹れて来い。」

侍女が蒼白な表情のまま短い返事を寄越して部屋を出て行った。

「この部屋に侵入者はいない。先の騒動は磁器を割ってしまっただけだ。だから物騒な刃物は必要ない。」

手の束縛が解かれる、だが首に回った腕はそのままだ。

──ど、どう言う状況?ああ、でも襲撃でないなら退くべきか…。

警護対象に刃物を向けるのはあり得ないと自由になった手でダガーを仕舞う。

「良い子だ。」

くすっと笑う息が聞こえたかと思ったら腕を取られて背で捻じり上げられ拘束された。

「なっ!放して下さい。私は何も!」

納得の行く説明が成されるだろうと踏んだ思惑が外れ、取り乱し藻掻く。

だが、体術の心得があるのだろう、背後の人物の拘束は隙なく揺るぎない。

背後から手が伸びで上体をひとしきり撫でられる。

それは隠し持った装備を確認する作業だった。

「どれだけ仕込んでるんだ。ああ、面倒だ。」

──何?

呟きに続いて手が胸元に差し入れられる。

「!!!」

息を詰めたのが解ったのだろう、言葉が続く。

「動くなよ。手刀には即効性の麻痺薬が仕込んであるんだろう?下手に肌に触れたら拙いだろう。」

そう言われて硬直する目の前で衣服の中に仕込まれた手刀が引き抜かれる。

──何の為に?

動揺を隠せずに藻掻くと顎を取られる。

ぐいと振り向く形で持って行かれると視界が覆われた。

「んっ!」

何が起きたのか解らなかった。

口に何か吹き込まれ、喉を何かが下る。

気が付いた時にはそれが噛み付くようになされた口づけだと考えるより早く拘束を開放されていた。

「何?なにが…。」

直ぐに対面するように振り向いて身構えた。

「これが耐性のない毒なら互いに危険な事だが、先ず可能性は低いな。」

ヴィークは抜き取った手刀を唇に当てて微笑む。

「え…一体何を…。」

言った瞬間膝の力が抜けた。

「どうして?」

「中々良い薬を使っているんだな。私は大概の薬に耐性がついてて、そう簡単には効かない。それに殆どの量を其方が引き受けてくれたからな。」

妖艶な笑みが向けられる。

「何故?」

唇さえも痺れてきた。

このままでは拙いと解っていても、もう打つ手がなかった。

「決まっている。黙っていてもらわねば困るからな。其方の弱味を得る為だ。」

ヴィークが踏み出すその足を見た瞬間に最高潮の恐怖が心を覆う。

「や…だ。くるな。」

胸元の武器を取ろうと腕を持ち上げたが、既に指が言う事を聞かなかった。

絶望に瞠目する間もなく視界が失われた。

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