04
明けましておめでとうございます。
今年が皆々様にとって良い年でありますように。私も何やかんやと頑張ろう~!
更新のんびりですが、気長によろしくですm(_ _)m
セダムと昼食を取りながらの手短な情報交換を終えて、一通りの要点の確認をして食堂を後にした。
宿舎を出て直ぐにセダムとは別れて、真直ぐにヴィークの自室へと足を向ける。
──あれだけ美しいお方だから、帝都から求婚者が追ってきても不思議はないが、余り野暮な事はしたくない…まぁこれも任務の内か。
自分の装備を思い浮かべて確認する。
「一応、対応できるだけの物はある。明日はもう少し装備を変えるか…。」
考え事をしながら歩いていると不意に腕を掴まれた。
「わっ!」
驚いて咄嗟にその手を返し相手の腕を捻じり上げる。
「いたたたたっ!待てっ待って!俺!」
眼前上方には金髪の後頭部、必死に首を巡らせて此方を見ようとする横顔はやはりと言うか、うんざりする程見慣れた者だった。
「解ってる!気配殺して近づくな!質が悪い!!」
思わず怒鳴る。
「悪い、悪かったって。もーしない、しないから放して。腕痛い!!!」
──また心にもない事を……。
その腕を更に捻って悲鳴をたっぷりと聞き届けてから開放する。
「痛いなーもー。」
涙声で腕を摩る姿は一見哀れだが、そんな姿を冷やかに流し見て身構える。
案の定、振り向く相貌は満面の笑みだ。
「良い加減懲りろ!シュタイン。」
「えー。だって気配消さないと近付けないしぃー。声掛けたけど、さっきも無視したじゃん。なのに、いっつも…」
「お前に構ってる暇はない。」
軽く頭痛のしそうなシュタインの空け振りに、いつも通りの無視を決め込もうと言葉を切って捨て足を進める。
「あっ待って!ジル!」
追い縋るシュタインを横目に構わず突き進むと、右に左にと位置を変えながら視界に入ろうと付き纏って来る。
──あーもー!何時もながらうざったらしい!
仕方なく歩を止める。
「シュタイン!うざい!」
金切り声を上げると、シュタインは叱られた仔犬のように眼前に正座する。
けれどその顔は『待ってました』と言わんばかりに輝いている。
金髪の少し伸びた天然パーマがくるくると柔らかそうで、その前髪の間に覗く瞳は若葉色をして期待に輝いていた。
──あーもぅ!いっつもこの流れだよ。面倒ったらない!
意識しなくても眉間に皺が寄る。
目の前の青年は自分より体格も歳も格付けすら上なのに、何時もどうしてこんなに自分に構いたがるんだろうかと腑に落ちない。
まるでそんな威厳は感じさせないけれど、シュタインと言うこの男は正規軍にあってキューウェル要塞の第一師団長を務める手練れなのだ。
帝国の主要要塞であるキューウェルの第一師団長といえばエリート中のエリート、将来を約束され、家柄・実力を伴った者のみが手にする階級だ。
正規軍にすら入れない傭兵である自分とは月とスッポン、身分も大きく違う。
それがどう言う訳か出会った初日から、毎日毎日判で押したように変わらずに絡んで来るのだ。
「シュタイン…ボスに呼ばれたんだろ?こんな所で油を売っていると余計に叱られるよ?」
その言葉に少なからずシュタインの顔色が青褪める。
「やな事言うなよ。どうせ叱られるんだ。出来るだけ後の方が良いに決ま…。」
「これ以上邪魔すると、任務に支障ありってボスに駄目押しするけど?」
シュタインのとんでも理論に付き合っている暇はない。
言葉を遮って告げると目の前の瞳が潤んだ。
「解ったよ。解ったから、ハグさせてくれよ。ね?そしたらボスんとこ行くからさ。お願い!」
一度だけだと人差し指を立てての懇願だ。
──そう言われて『はいどうぞ』と答える訳ないだろう。気色悪い!
そう言ってやろうかと思ったら目の前が真っ暗になった。
身体が持っていかれる。
上体の圧迫感に続いて頭上に大きな溜息が掛かる。
「ジルをハグしないと死ぬ。一日一回はこうしないとマジで死ぬ。」
「ちょっ。訳の解らん事言ってないで放せよ!こっちの意向を聞く気も無い癖に!毎度訳もなく抱き付くな!気色悪い!!」
何時もあの手この手でバリエーション豊かに、必ず一日一度は抱き付いて来るのだ。
──本日は返事待ちの間の強襲か!
すかさず両足で地を蹴って頭突きを食らわせる。
そして緩んだ腕を掴んでシュタインの二の腕の下に肩を入れて上体を倒す。
「せいっ!」
苦もなくシュタインの身体が浮き上がる。
「れっ?」
間抜けな声の次の瞬間にはシュタインの身体が石畳にどうと打ち付けられて悲鳴が上がる。
強かに背を打ったシュタインは後頭部を両手で抑えて転げ回る。
「いてててっ!」
「嫌だと言ってるだろう!」
「俺だってやだよ。ハグできなきゃやだ!減るもんじゃなし、ジルのケチ!」
涙目で訴えられて余計に腹が立つ。
「結局何時も嫌だと言っても聞きゃしない。自分勝手な奴は大っ嫌いだ。」
言い捨てて、横たわったシュタインの邪魔な足を蹴ると捨てて行く。
「痛!蹴らなくたって良いだろっ!ジルのケチ、乱暴者!」
「誰のせいだ、馬鹿!」
背後の声に振り向かずに反論を叫ぶ。
追ってこられては困るので足を蹴ったのだ、流石にシュタインも任に着いてしまえば邪魔はしないと解っているから、その場を逃げるように駆けだしたのだ。
──本当に時間無いって言うのにっ!シュタインの相手は私の任じゃないぞ。断じて!!
そうしてやっとの思いで辿り着いたヴィークの自室、扉の前で呼吸を整える。
──お待たせしてしまったかも知れない。
心を沈めて声を上げた。
「失礼致します。ウィケッド、戻りましてございます。」




