夜行列車「ヒンダカ」が通る
夜中の三時を廻ると、「ヒンダカ」というのが現れるそうだ。私は見たことがないし、見えないのかもしれない。ただ、どこからか「あっ、ヒンダカ」と、幼い子供の声がするのだ。それは窓の側からはっきりと聞こえる。もしかしたら、この声の主こそ「ヒンダカ」なのかもしれない。いずれにせよ、その姿はまだ二つのレンズに収めていない。なに、ネタを明かせば、恐くて目を開けることが出来ないのだ。しばらく経ってから、恐る恐る声のした方へと視線をやるのだが、そこには何も無い。
子供の台詞から、いつもいつでもそこに居るわけではないのだろう。その時刻になるとそこに現れ、あるいは通るのであろうか。だとしたら、まるで列車である。ビクビクしている私を尻目に、物音立てず、ーっと、通り過ぎてゆくおばけ列車。子供にしか見えず、その子供もこれまたオバケかもしれないとなれば、いよいよ我が家はおばけ屋敷の仲間入りというわけだ。
奇怪な夜行列車ヒンダカ、天月家を通る。と、いったところでおしまいとする。
ああ、ほんと、めでたい頭だなあ。