見下した態度が反感を買ってパーティーから追放された剣士は復讐する
「ヴァグラ・エイス。君をパーティーから追放する」
酒場に遅れてやってきた銀髪碧眼の剣士――ヴァグラ・エイスに、勇者は開口一番にそう告げた。
「は? お前はいったい何を言っているんだ?」
ヴァグラは眉間に皺を寄せて、勇者を睨み付けた。二人の物々しい雰囲気に、酒場の常連客が何事かとざわざわし始めた。
「追放だと? お前ら雑魚が俺抜きで何ができるっていうんだ?」
「君のそういうところがイヤなんだよ。いつも僕たちに見下した態度を取っているよね? 君は確かに強い。僕たちでは歯が立たないくらいにね」
勇者は呆れた表情で首を振った。勇者に同調するかのように、木製のテーブル席に腰掛けていた賢者と踊り子が頷く。
「君の実力は認めているけど、一緒に行動すると、疲れるんだよ。精神がね。だから君にはパーティーから出ていってもらいたい」
勇者は深々と頭を下げてきた。僅かに体が震えている。ヴァグラは舌打ちし、勇者の頭を掴むと、テーブルに叩きつける。
「ぐっ」
「そんなに俺が嫌いなのか? 俺がいなけりゃ、お前らなんざとっくに死んでいるぜ。分かっているのか?」
「それは……君の言うとおりだね。それについては感謝しているけど、君といると、息が詰まるんだ」
勇者は額をさすりながら、強張った表情でヴァグラを見つめる。耐えきれなくなったかのように、勇者はすぐに視線を逸らす。
「俺はいったい何のために、魔物からお前らを守ってきたんだ。こんな仕打ちを受けるなら、お前らを守らなければ良かったぜ」
ヴァグラは仲間から見放されたのがショックで、無意識に拳を握り込んでいた。
『…………』
ヴァグラは自分に突き刺さる視線に居心地の悪さを感じ、乱暴に扉を開けて、酒場から出ていった。
☆☆
「あいつら絶対に許さねえ」
ヴァグラは木の陰に隠れて、勇者たちが酒場から出てくるのを待っていた。
扉がゆっくりと開き、勇者たちが酒場から出てくる。自分には一度も見せたことのない笑顔で談笑している。楽しげな様子に、思わず舌打ちしそうになった。
軽く頭を振ると、ヴァグラは気配を消し、見つからないように、こっそりと勇者たちの後をつけていく。
勇者たちは楽しそうに歩き続け、やがて宿屋に入っていった。少し待った後、ヴァグラも宿屋に入った。
案内された部屋は質素で、壁際にベッドが置かれているだけだった。
ヴァグラは目を瞑ると、勇者たちの気配を感知し、部屋を把握する。
ゆっくりとベッドに腰掛け、辺りが暗くなるのを辛抱強く待ち続けた。ふと気付くと、窓から見える景色はすっかり暗くなっていた。
ヴァグラはベッドから立ち上がると、部屋を出た。
☆☆
音を立てないように、静かに扉を開け、部屋に足を踏み入れる。踊り子がイビキをかきながら、眠りこけている。
イビキに顔を顰めつつ、ヴァグラは剣を横に薙ぎ、踊り子の首を切断する。首の切断面から血が噴き出る。
「……俺を追放した罰だ」
ヴァグラは呟き、続いて賢者の部屋に向かう。部屋に入ると、賢者はスヤスヤと寝息を立てて眠っていた。
気持ち良さそうに眠る賢者のお腹を引き裂く。
「痛っ!」
賢者は目覚め、苦痛に歪んだ表情で叫んだ。目を見開き、歯をガタガタと鳴らし、ヴァグラを見つめる。
「どうして?」
ヴァグラは賢者の問いかけを無視し、目にも留まらぬ速さで何度もお腹を突いていく。息絶えた賢者の体から剣を抜くと、肉片が刃にこびり付いていた。
「勇者……次はお前だ」
憎しみの籠もった声で囁き、ヴァグラは勇者の部屋に向かった。
☆☆
勇者が穏やかな表情で眠っていることに腹が立った。そんなに自分といるのがイヤだったのかとヴァグラは腸が煮えくりかえった。
ヴァグラは思いっきり剣を振り上げ、勇者を真っ二つに引き裂いた。中心から綺麗に両断され、右半身と左半身に分かれた。
それだけでは怒りが収まらず、ヴァグラは縦横無尽に剣を動かし、勇者の体を細切れにする。もはや勇者の肉体は原形を留めていなかった。
満足したヴァグラは自分の部屋へと戻り、服を着替えた。
ベッドに寝転んだが、興奮状態で一睡もできぬまま、朝を迎えてしまった。
ヴァグラは従業員の悲鳴を遠くに聞きながら、宿屋を後にし、旅に出た。




