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公の場に出るなと言われたので、王家への支援を止めました

掲載日:2026/04/22


「お前、もう公の場に出てくるなよ」


 謁見の間で、王子レオンはうんざりした顔をした。


「堅苦しくて、雰囲気悪くなるんだよね。次からは白蓮華が出るから。お前はもういい」


 私は一度だけ瞬いた。


「……は?」


「聞こえなかった? 追放。そういうこと」


 王子の隣で、白蓮華が控えめに微笑む。

 なるほど。そういうことか。


「そうですか」


 自分でも驚くほど、声は静かだった。


「では、私の実家から王家へ回していた金も止めますね」


 今度は王子が固まる番だった。


「……は?」


「軍資金と、王都向けの穀物と、融資の保証です。私との婚約が前提でしたので」


「待てよ」


「待ちません」


「そんなの困るだろ!」


「でしょうね」


 私は礼をした。


「ですが、不要な女が気にすることではありませんので」


 そのまま踵を返した。

 背中に王子の声が飛んできたが、振り返らなかった。


     ◇


 王都で暴動が起きたのは、それから間もなくだった。


 公爵邸の門前で、王子は泥だらけのまま膝をついていた。


「戻ってきてくれ!」


 私は石段の上から彼を見下ろした。


「嫌です」


「国庫が空だ! 兵も民も抑えきれない!」


「知りません」


「お前がいれば何とかなるだろ!」


「何とかしていたのは、ずっと私です」


 王子は土に手をついたまま顔を上げた。


「悪かった! 俺が悪かった! 今度こそ改心する!」


「何度目?」


「……」


「白蓮華と浮気した時も、そう言いましたね。もうしない。私と添い遂げるって」


 王子は黙った。


「嘘でしたけど」


「今度こそ本当だ!」


「その言葉、前も聞きました」


 王子は縋るような目を向けてくる。

 昔の私なら、ここで折れていたかもしれない。


 でも、もう知っている。

 この人は、私の情に甘える時だけ素直になる。


「頼むよ……」


「無理です」


「セレスティア!」


「次に無断でここへ来たら、衛兵を呼びます」


 王子の顔が引きつった。


「そこまでするのか」


「ここまでされたのは私のほうです」


 風が吹いて、王子の外套の泥が乾いた音を立てた。


「俺たち、婚約者だっただろ」


「ええ」


「だったら――」


「だから何度も許したんです」


 王子の口が止まる。


「でも、それも終わりました」


 私は扉に手をかけた。


「待ってくれ!」


「もう遅いです」


 扉を閉める。


 重い音がして、ようやく静かになった。


 胸は少し痛んだ。

 けれど、それだけだった。


 私はもう、あの人を支えなくていい。

 それだけで十分だった。


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― 新着の感想 ―
あぁ、セレスが扉を閉めてなお傷心なのがつらい。 どっかで幸せになってくれい。 つか、国を出た方がよくないかい? 国庫カラなんだろう?
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