オルゴールの恩返し
街はイルミネーションが輝いていて、
お一人様には切ない季節になった。
でも私には関係ない。
行こうと思えばどこへでも行けるのだから。
と言いつつ出かけはしない。するわけがない。
寒い冬の日はこたつでぬくぬくというのが1番なのだ。
いつもの仕事終わり。
家に帰ろうと会社を出た時の事だった。
いつもの帰り道の路肩に、妙に目を引く物があった。
持ち主不明の、猫が描かれた小さな箱だ。
普段なら余計なトラブルを警戒して近づかないのだが、
今日に限っては吸い寄せられるように近づいていた。
人様の物に勝手に触るのは気が引けたけど、
触らないと持ち主確認すらできない。
泥棒扱いされるのも怖いので、堂々とした態度で確認をする。
……キョロキョロソワソワするから怪しいんだよ。
すると、蓋がひとりでに開いたのだ。
それと同時に聞こえてきた《きらきら星》。
この箱はオルゴールだった。
このままここに置いておくか迷ったけど、
ちょうど交番も近いし届けることにした。
小さな子猫を見た気がしたけど、
どこにもいないので気のせいなんだろう。
交番で手続きを済ませ、良い事をした気分で家に帰る。
その日は珍しく、とてもよく眠れた。
数日経ったある日、警察官が私に向かって歩いてきた。
一瞬何事かと思ったけど、顔が見えたらすぐ気付いた。
オルゴール対応をしてくれたお巡りさんだったのだ。
落とし主が見つかったのかと思い話を聞いてみると、
どうやら違ったらしい。
あのオルゴールには、盗難届が出ていたそうなのだ。
犯人は空き巣の常習犯だったらしい。
続けてお巡りさんはこう言った。
持ち主がお礼をしたいそうだが、どうする?
…と。
お礼は丁重に断っておいた。
大事なオルゴールだったからお礼を…との事だったが、
私にはそこまでの事じゃない。
でも人助けになったのはよかった事だから、
今夜の晩酌はちょっと奮発しよう。
自分へのご褒美だ。……お礼、勿体無かったかな。
金曜だという事もあり、少し飲み過ぎて眠っていた。
目が覚めると、机の上に何かがある。
あの時のオルゴール?…でも少し違う。
開けてみると、昔実家でよく聞いていた、
おばあちゃんのオルゴールと同じ曲だった。
きっとこれは夢。
おばあちゃんのオルゴールはもう無くなってしまったから。
でももう聴けないと思ってた懐かしい曲を聴きながら、
私は静かに目を閉じた。
そんな私を見つめる小さな子猫。
その子がオルゴールに触れると、
オルゴールと共にふわりと消えたのだった。




