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オルゴールの恩返し

作者: 夢彩
掲載日:2025/12/25

街はイルミネーションが輝いていて、

お一人様には切ない季節になった。

でも私には関係ない。

行こうと思えばどこへでも行けるのだから。


と言いつつ出かけはしない。するわけがない。

寒い冬の日はこたつでぬくぬくというのが1番なのだ。



いつもの仕事終わり。

家に帰ろうと会社を出た時の事だった。


いつもの帰り道の路肩に、妙に目を引く物があった。

持ち主不明の、猫が描かれた小さな箱だ。

普段なら余計なトラブルを警戒して近づかないのだが、

今日に限っては吸い寄せられるように近づいていた。



人様の物に勝手に触るのは気が引けたけど、

触らないと持ち主確認すらできない。

泥棒扱いされるのも怖いので、堂々とした態度で確認をする。

……キョロキョロソワソワするから怪しいんだよ。


すると、蓋がひとりでに開いたのだ。

それと同時に聞こえてきた《きらきら星》。

この箱はオルゴールだった。

このままここに置いておくか迷ったけど、

ちょうど交番も近いし届けることにした。


小さな子猫を見た気がしたけど、

どこにもいないので気のせいなんだろう。



交番で手続きを済ませ、良い事をした気分で家に帰る。

その日は珍しく、とてもよく眠れた。


数日経ったある日、警察官が私に向かって歩いてきた。

一瞬何事かと思ったけど、顔が見えたらすぐ気付いた。

オルゴール対応をしてくれたお巡りさんだったのだ。

落とし主が見つかったのかと思い話を聞いてみると、

どうやら違ったらしい。


あのオルゴールには、盗難届が出ていたそうなのだ。

犯人は空き巣の常習犯だったらしい。

続けてお巡りさんはこう言った。


持ち主がお礼をしたいそうだが、どうする?

…と。


お礼は丁重に断っておいた。

大事なオルゴールだったからお礼を…との事だったが、

私にはそこまでの事じゃない。

でも人助けになったのはよかった事だから、

今夜の晩酌はちょっと奮発しよう。

自分へのご褒美だ。……お礼、勿体無かったかな。



金曜だという事もあり、少し飲み過ぎて眠っていた。

目が覚めると、机の上に何かがある。

あの時のオルゴール?…でも少し違う。

開けてみると、昔実家でよく聞いていた、

おばあちゃんのオルゴールと同じ曲だった。


きっとこれは夢。

おばあちゃんのオルゴールはもう無くなってしまったから。

でももう聴けないと思ってた懐かしい曲を聴きながら、

私は静かに目を閉じた。




そんな私を見つめる小さな子猫。

その子がオルゴールに触れると、

オルゴールと共にふわりと消えたのだった。



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― 新着の感想 ―
小さな良い事をしたお陰で子猫からお礼を受け取った、ほっこりするお話でした。
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