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少年の行方

「あの馬鹿なにやってんだっ」


悪態をつくウィガロは廃教会の入り口にうずくまり頭を抱え込む。

「あぁもぅあとアイツが行きそうな場所はぁ」と呟きながら、ガシガシ頭をかき乱し。


そんな彼の後ろに細長い影がさし、ヒョロリとした若い男が顔を出す。


「おい。ここにあのガキ来てねぇか?」


顔を出したのは今話題になったばかりのジノ本人で。

唖然とする廃教会の中の面々を差し置き、スクリと音もなく立ち上がったウィガロは、ぐしゃぐしゃになった頭を抱えたままジノを視界に収め。


「アンギャーッッ」


と叫び声を上げた。


叫び声は廃教会に響き渡り。

高い天井にも反響してぐわんぐわんと余韻をのこす。

真正面で至近距離から奇声を浴びたジノは目を細め、眉を崩して耳に手を当てながら「ウィガロ兄うるさい」と苦言をこぼし。


「マジでうっさい」冒険者

「ウィガロ兄って一人で空回ってたの?落ち着いてよ」子供

「うぜーうぜーわお前の話も大声も心臓に悪いぜ。俺たちを殺す気か?」冒険者

「ウィガロ兄最悪」子供

「ジノ兄いるじゃん」子供

「兄貴ホラ吹いた?」子供


あわやジノがまた大ピンチでは?!と心配させられた廃教会の面々も、眉を吊り上げ容赦なくウィガロをなじる。

無報酬労働者としてギルドから来ていた冒険者達なんかは、ウィガロへの当たりが特に容赦ない。

余程走ったのか息がまだ整わないウィガロの首に容赦なく腕を絡めて引きずりまわしてヤジる。

ポカポカ洗礼を受けながらも当のウィガロは息を整えるのに必死なのと、ジノの無事な姿に安堵するのに忙しいから忙しい。



僕は彼等の様子を見ながら思案する。

余程焦っていたらしいウィガロは本気でジノを探している様だった。

対するジノは少年を探していて。

二人の共通点は衛兵の詰め所から少年がいなくなった事だけ。

なんだろう。

良くない予感がする。

僕は直感を大事にする方だから、このままジノを見つけて解決したと、問題を放置するべきではないと思った。


騒動を見ながら静かに胸元の服をキュッと握りしめると、いつのまにか隣に来たノノが僕の袖の端を握っている。

彼女の首元には、僕が彼女に渡した丸い飾りを引っ掛けた組紐が見えていた。


「あいついなくなったのかな?」


不安そうなノノの問いには気遣いが滲んでいて。

廃教会で騒ぎを起こした少年への気遣いが出来る彼女の優しさを感じて、僕は心配されたのが自分じゃないのに胸が暖かくなると同時、何と答えようか、うーんと悩んでしまう。

うんとうーんと悩んでる間に、廃教会の入り口に三人目の来訪者が訪れ。



「ジノいるかい?」


現れたエルザを訝しげに振り返ったのはジノ。

入り口側に居たまま息を整えていたジノは、ウィガロと同じようにエルザが自分を探していた事に首を傾げる。


「あぁ居たね、良かった。

アンタ詰め所に忍び込んだ誘拐犯にされてんだけどどういう事?」

「は?」


エルザの言葉にジノは惚けた声をあげ。

ウィガロはヤジられる腕からボロボロになりながら逃れると。


「だよな!俺もそれ聞いてジノちゃん探してたの!」


ほら吹き男だと制裁真っ只中だったウィガロは、汚れた口の端から血の滲む唾を吐き出して立ち上がる。


「ほらみろ!エルザも言ってんぞ。俺は嘘つきじゃねーわ!」


ワハハと冒険者等にドヤるウィガロは、今度はエルザから後頭部に一撃ツッコミを入れられて。


「今それよりジノの事よ。

ジノ、アンタがここにいるのは何で?」


エルザは息が整わないジノに問い。

ジノは片腕を口元に当てながら答えを返す。


「ぁー。俺はガキが詰め所から逃げ出した話を聞いてここに確認にきて」

「そうかい。

あの子が行方不明って誰から聞いた話だい?」

「バードンだな。

問題ある奴だし、もちろんそのまま信じた訳じゃなく、衛兵の騒ぎになってる様子も確認してきたんだがちっと俺も焦ってた……」


心当たりのある場所を探し回って廃教会まで来たというジノの答えに、エルザは頭に手を当てて息を吐き出す。


「やられた。

ジノ、あんた嵌められかけてるんだよ」


バードンといえば魔法使いの少年を無理矢理囲い込み、仲間として登録させたがっていたダリモアから来た冒険者と連んでいるロカの冒険者。

廃教会出身の冒険者を良く思ってはおらず、受付見習いになったジノにもよく絡んでいた厄介者で。


ウィガロもエルザも、ジノが不在のギルドハウスで「ジノがガキを詰め所から連れ出した」と騒ぐ彼等の姿を見ている。




ガセかと思い、衛兵に鎌を掛ければ本当に少年が詰め所から連れ出されていた事を知りウィガロも慌てここまで探しに来ていたのだが。


エルザの言葉を聞いて、ウィガロが「ちくしょーっ!」と叫び声をあげる。


「そういう事かよ!エルザ!ジノんことは任せていいか?!」

「いいけどアンタは?」

「俺はバードンとこいくわ」

「あいよ。へましたら許さないからね」


「ウィガロ兄」というジノの声を無視してウィガロはぐしゃぐしゃの頭のまま来た道を転がる様に駆け戻っていく。

こうなったらウィガロは止まらない。



「エルザ姉俺は」


ジノは残ったエルザにターゲットを変え口を開くが。


「分かってる。あの子を探しに行くって言う気でしょ」と、ジノの口を塞ぎ。

頷くジノに、「今アンタが動くのは不味い」と静止をかけながら。


「ジノが連れ出した噂がどこまで広がっているのか調べる必要があるね」


と、エルザが廃教会の仲間に告げた途端。

もう一人の訪問者が廃教会の入り口から顔を出す。





「あれー君ってジノだよね?

あの子供と一緒って聞いて来たんだけど、彼は何処かな?」


と、切れ長な目に蛇の目のように細長い瞳孔で。

廃教会をゆっくり見回しながら首を傾げて入り口に立つ白蛇の姿がそこにあった。

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