表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/77

僕の仕事

あれから本当に見かけなくなった黒騎士。

「黒ちゃんいなくなっちゃったの」と、ノノと一部の子供達は大袈裟に残念がっていた。


僕はそんな彼らの様子を見ながら思う。

怖い印象が目立つ黒騎士だけど、彼はもしかしたら子供達には優しい大人だったのではないだろうか。

彼の事が分からない僕の憶測だけれど。


その後、一日中ノノにロカの街を案内してもらった僕は、日が暮れるより先に拠点に決めた穴の中へ引き上げた。


拠点には当然のようにわんこも居座っており。

小さな僕は、狭い穴の中に居座るわんことギュウギュウにひっついたまま身を小さくする。

ポカポカしたもふもふを抱え込みうとうとしそうになるけれど。


まだ、日暮れには少しだけ時間に猶予があるから。

僕は瞳を閉じて集中する。

集中、集中。

拠点に戻る前に見つけた鳥の姿を思い浮かべながら、集中。



そして、視界は切り替わる。





鳥に視界を借りた僕は、小鳥から途中大きな鳥へと視界を移しながら。

森へ森へと飛んでいく。

勝手知ったる森の中で、熟知した回復の赤い実の木でしっかりと採取をしながら。

鳥のままの僕は、くちばしに加えた小さめの麻袋に木の実をたっぷりと入れていく。


袋をぱんぱんに膨らませながら。

次は毒消し草を、と。

別の場所に飛び立ち、気づく。


おかしい。

僕は、黒騎士からの意味深な指摘もあって。

僕の肩の獣が強く出ないよう、僕は存在を薄く薄くしながら鳥に視界を借りている。

それなのに、森の中に動物が少ない。

木の実を採取するとき、何度も遭遇した蛇にも遭遇しなかった。


変だな。

違和感を感じながら、僕はぱんぱんに膨らんだ麻袋を加え、一路ロカの街へと舞い戻る。


何か変だと感じながらも、そのまま違和感の正体に気づかない僕は、一晩を拠点の中で過ごし。





翌朝になると、ロカの街を歩きながら自分の目で見て回る。


昨日案内してくれたノノは、今日は商業区に花を売りに行くのだと言っていた。

孤児の育てた花で稼げる外貨はわずかだろう。


だけど、人里で生きていくためにはお金が必要だから。

お金を稼ぐために、僕も仕事を見つけなければならない。


ギルドを作りたいとウィガロに語っていたジノは、あの後早速ギルドの受付に面接を受けに出向いていた。

悪人ずらをしたジノは受付よりも冒険者だとでも言われる方がしっくりくるのに。

彼は片腕を失ってハンディを抱えている。


人相の悪さで門前払いになりそうだったところを、エルザやウィガロ等、孤児出身者の冒険者が多数援護し。

今日からジノは試用期間と言われながら受付に立つらしい。


彼ならば、僕の緑の依頼手続きも無視することなく進めてくれるだろう。

僕の依頼を受理してくれなかったあの受付の人とは違って。


なら、僕は他の孤児の様に依頼書をこなし冒険者のまねごとをしてみようか。

それもいいかもしれない。

だけど、僕は森の奥にも入っていけるから、緑の依頼書以外も請け負っていきたいところ。

それはこの小さな身体のままでは無理だろうか。


僕の様な子が、大人も苦労する依頼をこなし続けるのはかなり不自然な事だろう。


ううん、ううん、と。

僕は街を歩きながら仕事に悩む。



現在、僕は緑の依頼書請負予定の、暫定無職の幼児だった。




街の探索をそこそこに切り上げた僕はそのまま拠点に戻る。

わんこの姿はなかった。

餌でも探しに行ったのだろうか。


いつもより少し広い穴の中、僕は目を閉じ、集中、集中……。

まだ明るいロカの街の上空を、鳥に視界を借りて滑空する。


そして、昨日と同じように鳥の視界を移り替えながら森に降り立ち。

いつもの木の実と、毒消しと、効果は弱くても肌に気持ちい傷消しを麻袋につめた。




森を出て、大きな鳥から小さな小鳥に視界を移しロカの街が目の前に見えた頃だった。


ドクンと、波打つ僕の心臓。


違和感は森から。

いや、もっと奥の、森の奥の……。


空が黒く淀んで見える。

まだ日は落ちていない真昼間なのに、深い森のその更に奥の空が真っ暗に。



そういえば、僕はあの森の奥に進んだことが無い。

一度進んでみようと思って、何だかよく無い予感がしたから。そうしなかった。

その時の僕は、人恋しさを拗らせていたから。

森の奥よりも、人里へ、人里へ意識が向かっていた。


僕が森から出ようとして失敗した日の事を思い出す。

森と平地の境には投石の罠がいくつもいくつも仕掛けてあった。

そして、罠が発動するたびギルドと衛兵に整備され整えられる。


森と、平地を分ける罠をあそこまでしっかり管理していたのは何故だろう。


僕は沢山沢山考えながら、帰路を急ぐ。

何かが来る。

僕は確信をもってそう思った。


森で採取した実を検問所の傍の木の穴に放り投げた僕は、鳥の視界を閉じて転がるように穴を飛び出し走りだす。

心臓がずっとドクドクしていた。







「来るぞ!魔法使いを呼べ」


カンカン、カンカン。ロカの街の関所が警告音を叩いている。

遠目に見える森の境では、平地に並べた投石の罠が動いたようで土煙があがっていた。


「ありゃ、動物じゃねぇなぁ」


頬に傷を持つ壮年の冒険者が、武器を片手に嫌そうな顔で言う。


「ここんところ静かだったのに。出やがった」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ